十六夜セレナーデ
いちばん深い声を聴きわけるしかない。幾層もの皮と身をはぎとり、おびえてちぢこまっている情けないものが漏らしている囁きを聴くしかない。窓を開け、のぼりはじめた十六夜月を眺めながら、そう思った。ま、いいじゃねえか、と。いまはいましかないのだから、なんであろうと舟漕ぎ出すほかに術はないのだ。十六夜の月と♪Captain of the shipはミスマッチだとは思うが。今夜は、こいつが十六夜セレナーデだ。