「朝な夕なに…」番組宣伝ラジオ60秒
    トコトコと走る電車の走行音にのんびりしたアナウンス。


駅長『駅ー。駅ー。ひなびた田舎の空気のとってもきれいな駅ー。
美人の若女将のいる温泉はこの駅でおりますよぉ』


    咳き込むようなエンジンの音とぼやき声。


源太『ケッ、またあんなこと言ってら。
ぶぁっかじゃねえのか、朝晩二本の電車しかこねえで』


    エンジン音消えて、虫の合唱。
    その虫の声に重なって、谷川のせせらぎ、
    温泉のお湯がサラサラとこぼれていく音など。


若女将『(どこかうっとりとして)温泉の音、聞こえますか?
虫の鳴声、聞こえますか?
谷川のせせらぎ、聞こえますか?
秋のはじめの森の空気、感じますか?』


    板場。包丁でネギを刻む音や大鍋の煮物の音など。


味平『親方、若女将さんが、また…。(ゴツン)痛ッ!』

板長『味平、また指きるぞ。ちったぁ集中してみろ、男だろ』

味平『(小声で)男だからじゃねえか。渋いふりして、こないだの晩に若女将さんと大女将さんまちがって覗いて川落っこったくせ…
(ゴツン)痛ッ!』


    再び温泉のお湯の音と、少しツヤっぽい若女将の鼻歌も。
    《朝な夕なに》のテーマ音楽をバックに、
    温もりのある語り。


語り『その温泉郷は水と空気が底抜けにうまい山間に
ひっそりと建っているという。       
町というか村というか、日に二本の電車がとまる駅で降りたら、
駅前に一軒だけある何でも屋の「だるま便」のおやじに道を訪ね、         
おやじに山道をトコトコと案内してもらうといい。   
温泉宿には、美人の若女将一家と、なぞの渋い板前、その弟子の味平と名乗る若い料理人、ちょっとワケありの若い娘とが働いているという。
訪れた人は、この温泉郷で疲れた時間をすっかりいやされて、
みんな満ち足りた想いを抱いて帰っていくという。
水の惑星の山あいのどこかにひっそりとたたずむ温泉郷で旅館を営むある若女将とその周囲の人たちがくりひろげるハートウォームなお話、《朝な夕なに》。
水の惑星に登場する泳ぐ赤ちゃんは、こんな村で生まれたという。   

疲れたり、ちょっと休みたいなと思ったりしたら、
この《朝な夕なに》をのぞいてほしい。きっと元気が出るかもしれない』