その温泉郷をめぐる登場人物
ミニ・ラジオドラマ「朝な夕なに…」の登場人物と背景


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山間の隠れ里のような場所にあるこの温泉郷には、昔から知る人ぞ知る場所で、
口コミで評判を伝え聞いた人たちが多数訪れるといいます。
ときに、どこで耳にしたのか、若い学生やOLなどがやってくることもありますが、
ヤマンバもガングロもいないのどかさだけが取り柄のような温泉郷で一日を過ごすと、
そそくさと振り返ることもなく帰っていくのだとか。
そんなわけで、あまり人に知られず、隠れた温泉郷として人気があるようです。

旅館は、渓流に沿って建てられ、岩をくりぬいた露天風呂と、こじんまりとした
離れ、囲炉裏のある食堂兼憩いの間などで構成されています。
温泉はやわらかく澄んでいて、お湯に入るとみんな若く美しく見える気がするので、
都会暮らしに疲れたと思い込んでいる人たちに好評だとか。
近くには、渓流釣りのポイント、ピクニックに最適な牧場、
山菜や茸とりを楽しめる山、森林浴にもってこいの森などもあり、人によっては
とてもくつろぐのだといいます。

旅館は、犬好きの若女将タミ。
板場にはちょっと渋目でワケありの腕の良い板前、若くキリッとしたその弟子・味平。
失恋の痛手から立直るためにしばらくの間手伝いがてら逗留している
北海道出身の21歳の娘・チエの四人でつつましくしかし毎日楽しく営まれているらしい。
若女将タミの中学生の時の同級生・星くんは役場の観光課に勤め、影に日向に
タミの世話をやいています。
渋い謎の板前は、若女将タミを憎からず思っており、この役場の星くんのことが気になっている。
とくに「タミ」「星くーん」といつまでも中学生気分で名を呼びあっているのが嫌いらしい。
旅館のすぐ近くには伊勢屋という食堂があり、その店主は写真好きの雪兄さんと呼ばれ、
村会議員もつとめているのだとか。雪兄は、写真の腕は村一番だが、料理の方は最近興味をなくしている。弁当を頼まれると、草深い山奥なのにとりあえずエビフライを入れておけばいいと、
かたくななところが玉にキズだと村の古老たちは日なたぼっこをしながら噂している。
渓流の上の方にはまた別な村があり、その村ではとてもうまいお酒もつくられているらしい。
また、カネマンという民宿兼食堂があり、そこには客を客とも思わぬ
川柳とちょっとエッチな夜話ずきのおやじがいます。
おやじは渓流釣りの名人で、隣村の若女将タミの祖母とは、むかしちよっとした因縁もあったらしい。

この温泉には車でくる人が大半ですが、近くの町には小さな鉄道駅もあります。
その駅には気のいい駅長と二人の助役がいて親切に応対してくれるといいます。
また、駅の前には「だるま便」という名をもつ便利屋があり、
自分ではまだ青年のつもりでいる源太という中年男が経営しています。
店は丸太づくりで、日用品や食品 酒なども扱う、コンビニストアでもあります。
「だるま便」の名は、注文に応じて主人の源太が自らオートバイで配達することから
つけたのだといいますが、なぜ「だるま」なのかは 秘して語りません。
温泉旅館にも週に一度は配達にでかける土地の情報通でもあるのだとか。

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