2008 03/15 02:49
Category : 日記
土砂降り。タクシーに乗り、靖国に急ぐ。稲光。春雷。連絡を取り合いお茶の水猿楽町の横江のなじみの店で集合することに。店の脇に横江が立っていた。須田、日比野、渡辺と五人で、まず辻に献杯を。あれからちょうど三ヶ月。彼らと会うのも、あれ以来のこと。小上がりの円卓を囲んで5時間。おでんをつつきながら四方山話に興じた。ずいぶんひさしぶりに日本語を話した。気がついたら気持ちが春のように溶けていくのがわかった。潮騒のように辻のこと、残された娘たちのことが話題に上った。病院ではじめて会ったときの奇妙なまでの受け入れられた感覚を、みんなが共有していたことをはじめて知った。長いこと会わなかったおじさんのようなものだろうと、日比野。そんな言い方が似つかわしいふしぎな親和感を醸し出していた三人の娘たち。味の染みた冬大根を頬張りながら、ICUの待合室での夜を思い出す。春のうちに彼の住まいを訪れることを約し、店を出た。雨。日比野を途中で落とし蒲田へと向かう途中で雨が上がった。辻の嵐。辻の春雨。小腹が空いていたのでラーメン屋に寄り野菜ギョーザを一人前。夕刊紙を買って帰る。風呂にお湯を入れながらコーヒーを挽く。このあいだネットで仕入れたペルー産のアマゾネスという名の豆。飲みながら横江が、ピアソラを聴く女が好きだなぁ、と。そういえば俺の女はピアソラをよく聴いていることを、いま思い出した。長岡にもらったフランス製の紙香水を2枚燃やす。春の夜は切ないと、ふと思った。17歳の春の夜も切ないことばかりだったけど。芽生え生まれる季節をどうしてものがなしく感じてしまうのか知らぬが、あまやかさがますほどに人恋しさが募っていく。そんなふうに思えてならない。今夜の集いに今井さなえがいたら辻が喜んだろうな、と唐突に。慰謝されるのではなく、どこまでも他人を慰謝できたらと、痛切に思う。賢治のアメニモマケズは、究極のセレナーデなのだ。きっと。