消息の“行方”
ひとすくいの実感も湧かぬままに一日が過ぎた。冬らしい透き通った空気感に満ちた午後だった。空は青く澄んで昼の白い雲が夜中になってもはっきりと見えていた。29夜。ほぼ新月。あっけないといえば、なんとあっけなかったことか。戦うための時間も悲しみを見据える時間もくれなかった。もしかしたら、しっかりと見えていた三人の娘たちのたたずまいは、おれと同じように何の準備もなかったためなのかもしれない。彼の庭で遠吠えをしていたあの犬のほうがむしろ切実ではなかったか。酔って眠り込んだそのままの姿だけが残っている。悲しみを悲しみととらえることができない。想い描くことを仕事にしているつもりだったが、自分の想像力のあきれるような貧しさに、戦慄いている。いつか、この不在を、あいつの消息を実感することがあるのだろううか。