十九の春異聞2
以下
http://bakkers.gr.jp/~lami/revue/19noharu.htmlより引用
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下の文章は8月に神戸市民映画サークルで上映される「ナビィの恋」にあわせて 会報のために書いたものです
映画「ナビィの恋」のテーマソングといえる「十九の春」は、別名「よろん小唄」 「尾類小(ジュリグワー)小唄」「吉原小唄」など、1970年代に入ってからいろいろな 歌手の歌うレコードが発売されたようだが、詠み人知らず、元々沖縄の遊郭で流行し たもので、歌詞もたくさんのバリエーションがあるらしく、山原(やんばる)地方、 奄美の与論島、与那国島などでも歌われていたという。歌詞はヤマトグチの七五調、 メロディも沖縄音階ではない。
手元に沖縄の「マルフクレコード」から出ているCD「沖縄民謡特集」(FCD-1, 1987) に収録された本竹祐助・津波洋子の録音がある。レコーディング日時が書かれていな いが、おそらく60年代終わり頃か。伴奏に奇妙なバイオリンの音が聞こえる。沖縄で バイオリンとは一体、と疑問に思っていたのだが、どうやら意味があるらしい。

大正の頃か、辻の遊郭に「ヴァイオリン・カミー小」と呼ばれる遊女がいてバイオリ ンを弾き、「カチューシャの唄」や「ゴンドラの唄」が十八番で人気だったという。 当時内地には添田唖蝉坊らの壮士演歌など、バイオリンを弾きながら歌う音楽の形態 があった。これがおそらく遊郭で遊んだ内地の商人や役人によって都々逸などと共に 沖縄に伝えられたのであろう。 「十九の春」はその過程で形成されていった曲ではないだろうか。録音にバイオリン が使われたのは、そういう意味なのだと思う。

参考と推薦CD
竹中労「琉歌幻視行 : 島うたの世界」(田畑書店, 1975)
CD 大工哲弘「ウチナージンタ」(オフノートON-1, 1994)解説
CD 高田渡&金城恵子「よろん小唄(十九の春)」(B/C Record, 1998)

* なお、内地の古い流行歌が八重山でポピュラーであったということが、石垣島出身 の歌手・大工哲弘によって証言されている(ミュージック・マガジン 1994.10. p. 1 34-135)。音楽の伝播力にはつくづく驚かされる。