六分の侠気に四分の熱。
麻布の打合せの後、立ち食いそばが食べたくなり六本木へ。麻布警察隣の立ち食い屋に。そばにコロッケとちくわとかき揚げを乗せてもらい昼飯にした。それから“れいの”に。ブラジルのオールドコーヒーを二杯。通りに面したいつもの席に座り、大きな窓から道行く人を眺めて小一時間。暮れかけた六本木通りを苛立ちもなく眺めることができた。二ヶ月前は、この喧騒に耐え難い思いが濃かった。

オフィスに戻る途中で連絡が一件。
財閥系が万人単位のリストラ敢行した上にボーダー取っ払って手を結んでも生き延びようとしているご時世に、千人程度の企業が会社ごっこやっていてとうするのか、と思う。
先頭で斬り結ぶ者のリアリティを、その汗と涙を、大本営はいつの時代も認識することはないのだ。あたりまえだろうと言われればそれまでだが、遠い話だなとは思う。
耳に入れたくはなかった。

バロン吉本が柔侠伝で《覚有情》と背中に彫らせたのは、さてどんな意味であったのか。すべてが退嬰的になっていたあの時代に向けて放たれた三文字だが、この真っ白な暗闇にこそにつかわしい。

感傷でいいじゃねえか。
センチメンタルでもいいじゃねえか。
六分の侠気に四分の熱。
それでいいじゃねえか。

さて、これから知事へのお便りを一通と、
締め切りすぎたらしい宝島のベスト6の回答を書く。
明日は五時過ぎに起きてロケハンだ。