たとえば「ラスト・ワルツ」
このベスト・コレクションの森田童子の岸田劉生の[麗子像]をほうふつとさせる肖像を描いたのは風間完。蒼い背景に右肩を下げ、胸元が大きく円く開いた淡い桃色のシャツかセーターを着た森田童子がまっすぐに前を見ている。涙がにじむその寸前でこらえてるように見える。風間はその全体をやさしくぼかしをかけて仕上げている。
眺めていると、抑え難いものが、ある。



  「ラスト・ワルツ」

   《美しき明日に
    ついても語れず
    ただあなたと
    しばし この時よ
    すべてが なつかしき
    この時よ
    すべてが終わる この夜に
    せめて 最後に ラストワルツ

    この暗き部屋の
    窓から 
    街の灯は まばゆく
    自由が 見える
    すべてが 遠き
    この時よ
    このまま 若い時が 終わるのなら
    せめて 最後に ラストワルツ

    美しき明日に
    ついても語れず
    ただ あなたと
    un deux trois
    すべてが 帰らぬ
    un deux trois
    すべてが 終わる
    un deux trois
    せめて 最後に ラストワルツ》