十三夜。もう迷いなし。
《むじなの森》と名付けられた忘れられない場所で
生涯でいちばん暑く熱い夏を過ごしておったので、
そこからどうやったら抜け出られるかを模索しているうちに
いつのまにか秋になってしまった。
虫の声を聞きながら思い至ったことがある。

それはむりに抜け出す必要がないということ。
処理しきれない体験なのだから、処理する必要はないのだということ。
身のうちに余地があるのだから、どこまでも応えていけばいいのだということ。

そう思ったとたんに、いまさら何を迷っておるのか、という天の声が聞えた。いや、聞えたということにした。

よって、今夜で修行はおしまい。