十年の後
ホテルの部屋で目覚ましより少し前に目が覚め、カーテンを開けると町の屋根が真っ白になっていた。古河に来るようになって9年目だが、撮影当日の朝に積雪というのははじめての体験。
現場につき、風の冷たさに閉口するも、雪晴れとなり抜けるような青空に気を取り直し、撮影プランを大きく変更して、光りあふれる世界に取り組む。
次の映像をどう撮るか、いわば口立ての演出で夜まで、一気に撮り進む。
各セクションとも急な変更に音をあげず、黙々と応えてくれた。うまくいきすぎることに欲が深まり、いらだちばかり募らせたが、その成果は十分に得られたと思う。

遅い晩飯のときに、
十年ぶりに再会した「風と走る」の長谷川さん、照明の鈴木さん、VEの長岡君、撮影の倉持さん、特機の木内さんが並んで飯を食っているのを眺めながら、あの風と光を求めて東北各地をさすらったときのことを思い出し、あのときのレガシーの意図を話しているうちになんだか胸が熱くなった。

湯治部と名乗りをあげるきっかけとなったロケである。

またいつかこのメンバーで、記憶に残る仕事をしてみたい。あれから十年経っても、今夜は昨日の続きのように過ぎた。
勇気づけられる一日となった。