2000 09/21 10:38
Category : 日記
「光源」桐野夏生/文藝春秋
「OUT」にしろ「柔らかな頬」にしろ濃密で深い暗部を持つまったくオリジナルな小説世界を構築しながら、なぜこころに届かなかったのか、昨日出たばかりの「光源」を読んでみて思い当たった。
映画制作を題材に、それなりの取材ぶりを随所に発揮し、まぎれもなく1990年代末という時代設定にしておきながら、なぜかこの小説に出てくるのは20年以上も前のような映画屋たちばかりである。だからアメリカで撮影を学んだことになってている撮影監督「有村」をはじめ、登場するすべての人間がみんなどこかずれている。
そしてこの作品もまた、どの人物にも共感を抱けなかった。リーダビリティが極めて高い作品だけにそのことが不思議でならない。
タイトルの「光源」は映像世界で言う照明のこと。なのにこの作品にはその光源のキーライトがどこにも見えないのだ。
とりわけエピローグに俳優高見のエピソードを持ち込んだあざとさには驚いた。
1999年の直木賞作家ではなく1965年あたりの直木賞第1作を読まされている気がした。
「OUT」にしろ「柔らかな頬」にしろ濃密で深い暗部を持つまったくオリジナルな小説世界を構築しながら、なぜこころに届かなかったのか、昨日出たばかりの「光源」を読んでみて思い当たった。
映画制作を題材に、それなりの取材ぶりを随所に発揮し、まぎれもなく1990年代末という時代設定にしておきながら、なぜかこの小説に出てくるのは20年以上も前のような映画屋たちばかりである。だからアメリカで撮影を学んだことになってている撮影監督「有村」をはじめ、登場するすべての人間がみんなどこかずれている。
そしてこの作品もまた、どの人物にも共感を抱けなかった。リーダビリティが極めて高い作品だけにそのことが不思議でならない。
タイトルの「光源」は映像世界で言う照明のこと。なのにこの作品にはその光源のキーライトがどこにも見えないのだ。
とりわけエピローグに俳優高見のエピソードを持ち込んだあざとさには驚いた。
1999年の直木賞作家ではなく1965年あたりの直木賞第1作を読まされている気がした。