多感時代
「管弦楽を通じて啓示されたダイナミズムの使用は、独奏楽器の曲にまで適用されるようになり、ことに鍵盤楽器用のソナタは、いちはやく、これを取り入れた。
たとえば、大バッハの子、カルル・フィリーブ・エマヌエル・バッハは、その最大の例である。
彼のソナタはいわゆる《多感時代》の典型的なものである。そうして、彼の音楽は、このあとにくる音楽家たち、たとえばハイドンやモーツァルトにとっては、『大バッハ』というのは、ヨハン・セバスティアンではなくて、このエマニエルのことをさすくらい流行した」
吉田秀和/新潮社