F1、インディ、「ネバーランド」、ピアノレッスンの夜
「ネバーランド」恩田陸/集英社

窓を開け、ドアを開けると北からの風。涼しいというより、肌寒い。穂高の山小屋で過ごす夜のようだ。
ソファに寝転がり「インディ」と「F1」を交互にかけながら、恩田陸の「ネバーランド」を読む。
F1はシューマッハが負けたので気を良くしたが、インディでモントーヤが突然エンジンストップでレースアウトしたのにはじんときた。見比べていて感じたのはF1はもう完全に終わりだな、ということ。ホンダが今後本腰をいれたとしても魂を揺さぶられるものにはならないだろう。制約が生んだ弊害はかなり深い気がする。
インディはこのままトヨタがホンダを上回るようだと意外なドラマツルギーが生まれていくように感じる。
あけっぴろげなアメリカならではのレーススタイルに、わずかにウエットさが加わることで日本人好みの見どころができあがる、そんなふうに思う。
恩田の「ネバーランド」はなかなか楽しめた。自身が後書きで書いてるようにいつか自分が成長したときに書きたい小説の原型になるような気がした、と書いていたがその通りだと思った。いま少し書き込んで、あとわずか恩田がむだな星霜を重ねれば、きっと素晴らしい「青春」小説に仕上がると思う。惜しいなと感じながら読み終わり、後書きを読んで、なるほどねと思った。こういう経験は珍しい。
こんな資質がありながら、どうして「月の裏側」などという安直な小説を書いたのか、そこが不思議だ。
二つのレースのあとはWOWOWに切り替えて「ピアノ・レッスン」を横目で見ていた。二度目だが、今夜の肌寒いような夜風には冷え冷えとしたその情感がよく似合った。映画自体はキライだが。
これで尻に火をつけることができた気がする。
よく小説を読み、よく映画を見た。
短く熟睡し、起きたら一気に書き上げよう。

勝算は我にあり?