桜 さくら
四月四日に二十四節気の第五清明になり、
うららかな日差しを受け、万物が明るく清らかである
意味を表している。

万物が清らかで生き生きした様子を表した清浄明潔を
託した季語である。

東京やその他地方で桜が開花し、満開になった話を聴く。
映像で見た桜は美しく、私には遠い花だった。

10年前に静岡で町会役員をした時、見てから
既に10年が過ぎ二人で行ったお花見が懐かしい。

桜並木の周りには菜の花が植えてある町が多く、
目の下には川がざぶざぶと流れて風情があった。

坂の上のお寺迄、桜吹雪の下を歩きながら
桜に「偉いね。一年も雨風に耐えて毎年咲いてくれる。」
花弁に頬を寄せて愛しさ故に花の中に顔をうずめた。

そんな桜が風にちらほら散り始め、人は足で踏んで
通リ去って行く。あれ程人々を楽しませてくれた桜に
「有難う。」お礼を行って車庫迄歩いて帰宅した。

桜も人も散ってしまえば儚いもの。だからこそ、
生きて居る内が花なのかと思いながら散歩して居た。

家の二階の空き部屋で埃をかぶった琴の埃を拭き、
桜の曲を引いてみた。さくら、桜、弥生の空は
見渡す限り♪下手で情緒の無い曲になってしまう。

今は沖縄に来て居るので散歩がてら緋寒桜を
「可愛い花。」と喜んで見られたので充分である。

一年中咲いているハイビスカスは強い花だと思う。
散れども散れども綺麗に咲き、心を癒してくれる。

何が有っても窓ガラスからハイビスカスが毎日此方を向き、
「私は散っても何度も咲くの。」聞こえる。

私も強い人間にならなければ生きては行けない。

ほろ苦き 蕗炊く香り 漂ひて 厨は春の 溜まりとなるぬ
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弥生
雨水は、降る雪が雨に変わり、雪解けが始まる頃。
山に積もった雪もゆっくりと溶け出し、田畑を潤す。

霞初めてたなびき、遠くの山がぼんやり霞んで見える。
季節の移り変わりは早く、直ぐに弥生がやって来た。

すると雛祭りが来る。その翌日に母が61才で
息を引き取った。母の身体を清拭した時、
ごめんなさい!と涙で詫びた。

母に毎年何度もお小遣いを送っていたが、
その金銭で従妹達を旅行に連れて行った。

従妹に聞いた時、私の働いた月給等で従妹達を、
遊びに連れて行った事に腹立ち喧嘩を良くした。

何故、温泉に行きたければ私に声を掛けないのか。
性格も合わなくて喧嘩をした事をあの世の母に詫びた。

お盆、お正月には両親にお小遣いを送り、
「今日は誕生日よ!」母から電話が来るので
言う通リに送っていたが、当然の事に思っていた。

春まだ浅く桃の花さえ咲いていなかった。
庭に雪が残りザクロの実が真っ赤に割れていた。

実が熟してもザクロは口にすると酸っぱい。
口の周りが口紅を差したように赤くなった。

13年掛けて父の負債を父と二人で返済した時、
母は楽に暮らすことも出来ずに天国に逝ってしまった。

私が速達で送ったお小遣いを胸に抱いていた光景を
見て、母は私の事を大切に愛しんでくれたと、
嬉しさで涙がいっぱい頬を流れた。

貧しさ故に冷たくした事は分かっていた。
私も思いやりが足りなかった。反省しても遅いのに。

月日の流れは速く、今の私はとんでもなく遠い沖縄に
来て、「幸せに暮らしています。お母さん!」
毎朝、日の出に向かい両親が安らかに眠れるように
祈願している。その時私を守って下さいと祈願する。

天地に 春光満ちて うらうらと 心遊ばす 弥生の日中
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満開の冬桜




丘の上の坂道を歩いていたら
ぽつぽつぽつりと、雨が降る。

一軒、二軒、3軒、豪邸が建っている。
その間にアパートやマンションが並び、
お店は一店舗もない。

コンビニ一店舗くらい欲しいな。
どの家も車で買物に行っているのかしら。
散歩をしていても誰にも逢わない。

何と寂しい町だろう。
主人が電動自転車を買ってくれたが、
キックボードを改造した物で私には合わない。

日本列島は大雪で雪、雪、雪が続いている。
其の冷たい風が沖縄に吹いて、
歩いても歩いても手足が冷たく悴む。

どの部屋にも冷暖房は付くが付ける訳にはいかない。
主人が良い顔をしないから。

立春になり、春は山の近く迄きている。
うららかな春は直ぐそこに。

私は人前では勝気者に見られても、
一言の言葉に傷つき、涙がぼろぼろ流れる。

泣きたかった!誰にも泣き顔なんて見せたくない。
そんな時、遠くの山や草花を見ながら外を歩く。

野に咲く福寿草やタンポポに癒される。
「只今!」元気に笑顔で帰宅する。

春キャベツ 包丁入れて しずく飛ぶ
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父に会いたい
あれは何年前だったでしょうか。

睦月に産まれ睦月に亡くなった
父の訃報を知らせる電話だった。

伯母から訃報を聞き愕然として、
命は終には消えるものだと

自分に言い聞かせるのに、
相応しい裸木と北風冷たき冬の朝だった。

父に最後に逢った時、「湿布を買って来ますね。」
それが永遠の別れになってしまった。

92才。父は大腿骨の手術後、再び転んで
足が不自由になって耳も遠くなっていた。

黒板を傍に置いて書きながら会話をし、
とっても嬉しそうな顔を見れば元気な父を思い出す。

そして介護の方と伯母に感謝しきれない程
有難さを感じ、言いようのない寂しさが胸をよぎる。

この家を離れたくない!アパート暮らしは嫌だ!
どうしても私と同居して貰えなかった。

私は我が親不孝を反省し、小さなお墓を立てた。
お墓詣りも中々行けず、数年に一回位だった。
今度はもっと立派な大きなお墓を立ててあげるね。

両親、姉に「ごめんなさい!」墓地で泣き崩れ、
涙が止まらぬ程泣いた。

肉親とは此れほど迄に大切なものだったか、
後悔ばかり。

今は毎日忘れずに両親に手を合わせ、
朝日が昇る方向を向き、成仏するように願う。
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絹ごしの雨



ぽつぽつ静かに
絹ごしの雨が降る。
道端の雑草が青々と見ゆる。

少年が親に叱られ泣いて居た。
其の泣き声が散歩道迄聞こえる。

男の子は泣いては駄目!
泣き声は止まらない。

それでも泣きたいなら、じっと隠れて
雲から突き出た山頂で、

星を見上げてそっと泣きなさい。
少年は素直に真っ直ぐに育ってくれれば良い。

どんなに悲しい事が有っても、
明日を信じて生きようね。
叔母さんと一緒に御家に帰ろうね。

そういう私も泣きたい。
泣き友の面影が残っている。
呼び戻せるものなら呼んで来たい。

しかし命は何時かは消えるもの。
相応しい裸木と冬の空。
あゝ冬の裸木、

葉も一ひら二ひら残っているだけ。
枝は勢いづいているが、

私も新しい季節の誕生が寂しい。
しとしと静かに絹ごしの雨ふる宵。
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