食の安心は、先ず現場から。。。
 というタイトルで、春日あぐり研究会代表の婦木克則氏が新聞の『論』というコラムに、

 二月おわりに、京都府丹波町で発生した鳥インフルエンザも、出荷制限が解除され、約二ヶ月がたとうとしている。当時の大騒ぎがすっかり過去のものとなり、普段通りに戻ったかに見える。しかし、現場では、その時のツケがいまだに解消されておらず、わが氷上郡春日町でも、やっと山積みにして保管していた卵の焼却が終ったばかりである。

 食の安全、安心に関する事件は、病原性大腸菌O-157、BSE(牛海綿状脳症)、食品メーカーの偽装表示など例を挙げればきりがない。このような場合、犠牲になるのは、現場の生産者であることが多い。今回も朝田農産の会長夫妻が亡くなられた。様々な見方もあるだろうが、私は同じ農業経営者として、非常に胸が痛む思いだ。農業で飯を食う。それを命題に農業者は、必死に取り組んでいる。経済の中で生き残る道を探しながらの選択が、企業化、大規模化だっただろう。もちろん、農政もそれを後押ししてきたはずだ。

 しかし、この事業が発生したとき、多くの借金と従業員を抱え、しかも、自分の人生をかけて作り上げてきたものを一瞬にして失うという事態で、発生をすぐに報告できただろうか。それを考えると、その罪を簡単に論じることはできないと思うのである。無登録農薬を使用した青森のリンゴ農家が自殺する事件も数年前に起きている。農家は日々、命を削り、命を懸けて取り組んでいるが、天災、価格、農政などどれを取っても、安心して農業を続けていける状況にあるとはいえない。東北の養鶏農家の友人は、自分の鶏が鳥インフルエンザに感染したら、つぶれるのではとの不安をいつも抱えているという。

 今回のことで、篠山の養鶏農家の友人が、食の安全、安心は、農業経営が安全、安心であることが前提だとの思いを語ってくれた。虫食いなどでも確実に引き取られ、価格に差がないとなれば、無駄な農薬を減らすことは容易である。無農薬での栽培を依頼されても、実際には、虫食い穴が二つ以上あれば低級品になり、虫食いのクレームが当たり前のように入るのだ。スーパーに虫食いが並んでいることはないのである。そうなれば魔法を使いたくもなる。農家は、無視に食われないか、雨が降って病気が出ないかなど毎日、胃が痛くなる思いをしている。栄養剤を飲みながら、夜遅くまで荷造りをしている野菜農家の友人をみていると、まさに命懸けなのだと思う。

 畑で、虫だらけ・ふんだらけのキャベツを見れば、おそらくほとんどの方がおののくだろう。チョウが乱舞しているのを見て「たくさん飛んでますねえ」などとのんきに言える状態でなければ、安全、安心な農作物は作れないとさえ思える。

 今回の事案は、大規模集中が、逆にリスクを高めていることを私たちに気づかせてもくれた。華やかに見える大規模化も一つ間違えば、われわれの食の安全、安心を大きく揺るがすのである。これまで手本としてきた米国式農業では、大規模集中がすすみ、多くの補助金もそこにつぎ込まれることとなり、大草原の小さな家のような家族農業は、崩壊しているという。

 この機会に、いま一度、多様な農業のあり方を見つめ直し、家族的な農業が成り立つ方策を考えなければ、食の安全、安心と言う問題は、流通業界などの利潤追求に利用されるばかりで、本来の姿から遠のいていくような気がするのである。

 ふき・かつのり氏は、1963年、氷上郡春日町生まれ。農水省農業者大学校卒。消費者との提携を主とした農業経営を展開。若手農業者と春日あぐり研究会を結成し、鳥インフルエンザ感染問題で、「地域の食と農は地域で守ろう」と支援を求め、多くの賛同を集めた。。。

 食べることって、切っても切り離せない問題なんですよねえ。工場で生産出来るものとは違って、お天気に随分左右されてしまう農業。。。モンシロチョウが飛び交う畑。。。のどかですが、やはり虫食いキャベツは格下げになるんですよね。