馬場悠男著『「顔」ってなんだろう?』
 馬場悠男著『「顔」ってなんだろう?』。解剖学、そして人類形態学。そういう領域の啓発書ということになるのであろう。
 確かに「十人十色」といえば、多くは性格ではなく「顔つき」ということになり、美形・美顔など配偶者選びのなかで、それなりのウェーとを占めるのかも知れない。

 動物にとって顔とはなにか。生殖・排泄・運動機能はともかく、それ以外の多くの器官が「顔に集中」という(20p)。これは解剖学的所見。確かに、そうである。
 猿人(700万年前)、原人(200万年前)、旧人(50万年前)、新人(5万年前)という進化過程(29-34p)が現在の研究水準らしい。

 「縄文顔と弥生顔」(40p)というのも、よく指摘される観点。一覧表があって「口元」「まぶた」「彫り」などの比較項目がある(41p)。弥生人の祖先はまず、自分たちで人口を増やし、弥生人70-80%、縄文人20-30%くらいの段階で両者の混血を開始したと、見る(50p)。

 最後に著者は書く、「顔を鍛えること」。よく噛んでということか。「農トレならぬ顔トレ」に「未来の私たちの顔の運命がかかっている」とする(134p)。
 (NHKこの人この世界 日本放送出版協会 2009年)。