雌雄阿寒岳は夫婦、先立ち雄阿寒岳は先妻(山本多助談「阿寒岳の争い」)

  雌雄阿寒岳は夫婦、先立ち雄阿寒岳は先妻(山本多助談「阿寒岳の争い」)

 『北海道の伝説』(北書房 1970年発行)272~273pに所載の「アイヌ民族伝説」。
 雄阿寒と雌阿寒とは夫婦山だが、もとは摩周岳と雄阿寒岳とが夫婦であったのに、いつの間にか雄阿寒は雌阿寒を妾にするようになった。
 そうしたある日のこと、

 雄阿寒岳は男友達である斜里岳と、弓勢をきそって腕くらべをしたところ、どうしたはずみか雄阿寒の射た矢が、本妻である摩周岳の太股を射てしまった。
 摩周だ岳は。

 「妾をもったので私が粗末にされるのだろう」と悲しみ、
 ささった矢を引き抜いて根室の方までやって来て傷口をいたわりながら、振り返ってみると。
 まだ阿寒の山がみえるので、更に遠く海をわたって国後まで来て落付いた。

 国後のチャチャ山がそれである。
 だから釧路の者が国後に行くと、チャチャ山は故郷のことを思い出して泣くので、雨が降ってあれる。
 だからあの沖を通るときには煙草をあげて通るものだ。

 摩周岳の麓の赤い岩は、雄阿寒の矢で傷ついた時に流した血にそまったのである。
                         (阿寒湖畔 舌辛音作老伝)

 摩周湖第一展望台に着いて、駐車場から西の方を臨むと、雌雄阿寒岳が眺望できる。
 18年7月16日に撮影の画像があった。
 阿寒の山は厚岸・波羅山岬の丘頂でも、根室半島・春国岱でも観察。

 雌雄阿寒岳・摩周&斜里岳・春国岱=根室半島の位置関係が念頭にあると、極めて明快。