津波口承伝説7話、避難地名2所、被災モニュメント2所 アイヌ民族伝承と津波被災 in 釧路国
津波口承伝説7話、避難地名2所、被災モニュメント2所 アイヌ民族伝承と津波被災 in 釧路国
22年春のことだが「アイヌ民族社会で語り伝えられた津波伝説」という内容で、原稿を記載した。
 釧路国にはアイヌ民族社会でこれまで長期にわたり語り伝えられてきた津波来襲を語る口承伝説が7話、津波来襲に備えて二か所の<避難地名>が残されている。
 口承伝承は戦前に更級源蔵、佐藤直太郎、渡辺茂氏らの採話によって記録されたものである。

 それぞれ『北海道アイヌ伝説集』『北海道伝説集〈アイヌ篇〉』『釧路叢書 第九巻』などに収録、もしくは採録されていた。
 2005年になって地質学者の高清水康博氏が「北海道における津波に関するアイヌの口碑伝説と記録」を発表し、「実際に津波が起きていた」とする内容が示された。
 そこらあたりを念頭に北海道東部釧路国の津波伝承、津波避難地名、それに後世においてモニュメントを設置したケースをまとめて、みるに。


 「津波口承伝説7話、避難地名2所、被災モニュメント2所 アイヌ民族伝承と津波被災 in 釧路国」ということになる。
 (1)象徴性=紫表示、(2)象徴性と実在性の境界=薄茶表示、(3)実在性=茶表示の三グループに位置づけられる。そう読んでみた点である。

 (1)象徴性=紫表示
 ①(シャリ生活圏)オホーツク海-藻琴山-屈斜路湖
-オプタテシケヌプリ-クッシャロコタン(クスリ生活圏)
 ②(ネモロ生活圏)野付水道-西別川-虹別の一本木-多和川-釧路川(クスリ生活圏)

 (2)象徴性と実在性の境界=薄茶表示
 ③(クスリ生活圏)太平洋-釧路川古釧路湾-ツルハシナイ川
-鶴居・キラコタン岬-根釧台地-(ネモロ生活圏)
 ⑦(シラヌカ生活圏)太平洋-コイトイ沼の神岩‐白糠・恋問-庶路川-阿寒・ウエンペツ川‐阿寒川

 (3)実在性=茶表示
 ④(アッケシ生活圏)太平洋-汐見川=ヌサウシコタンペツ-疱瘡神カスンテ-別寒辺牛川‐(ネモロ生活圏)
 ⑤(クスリ生活圏)太平洋-クシロの津波‐釧路川(クスリ生活圏)
 ⑥(クスリ生活圏)津波と春採湖‐釧路川(クスリ生活圏)
 ⑦(シラヌカ生活圏)太平洋-コイトイ沼の神岩‐白糠・恋問-庶路川-阿寒・ウエンペツ川‐阿寒川
 ⑧(シラヌカ生活圏)太平洋‐茶路川-白糠のアイヌ語地名:キラコタン-茶路川(トカチ生活圏)
 (佐藤宥紹「Ⅵ 補論 伝承・記録に読む自然災害」 酒井多加志監修『釧路の自然災害と防災・減災』所収 釧路市 2022年)