秋風のような
夜風になった、公園でしばらくタバコを吸っているうちに急に涼しくなり、晩夏のような風に変わった。雨になる前のような、ちょっとおかしな気分になる涼しさだった。戻って、1年分の反古をゴミ箱に。4000近い数になっていた。流れている時間が、すっと切り替わった。そういう感覚が鮮明になったので…。ふり返ってみれば、どの時点でも良かったのだ。ただ、やる気を維持するためにだけ持続させていたのだと、わかっていながら踏ん切りきれなかった。黒と白ほどにはっきりしていれば、手間かけるまでもなかったろうが、情はどこまでもグレーゾーンを漂うのみである。いたしかたなかった。後朝の歌は、すでにいやになるほど歌ったではないか。ま、そんなところだ。七月は夏になる前に消えていく。それもまた…いいじゃねえか。

にしても、あれもこれも蓄積していくことは気が遠くなるような時間だが、消去する瞬間のなんと短いことか。ため息つく間すらない。クリック。シュッ。消滅。消したものは、いつかアタマのdiskからも削除されていくのだ。back不能とするために、手がかりとなる痕跡を思いつくかぎり外した。あとは夏らしい日ざしをまち、灼かれてしまえば痕跡もない。はず。昔は、絶対にこんな感じ方をしなかった。いや、できなかった。年を重ねるというのは、慰謝する術を知る、ということなのか。単に、執着がうすくなったのか。それだけの時間が過ぎたということか。ま、どっちでもいいが。うっちゃった。気がつくと鼻の通りがラクになっていた。つかえていたものが溶けていった。なんだこりゃ。