春の夜は寂しき極みわがむねの闇のピアノが鳴りいづるとき 福島泰樹
話の接ぎ穂がなくなっているのだと、不意に気づいた。ひりひりするような感覚もメルトダウン。こういう変化はなにか物理的な作用、あるいは化学的な作用なのだろうか。想いはどうして維持できないのか。あるいは想いはどうして生起するのか。とどめることができずに暴走してしまうのか。個体差はどのくらいあるのか。17歳でわからなかったことは、この歳になってもなお謎のままだ。17歳であきらめられなかったことは、この歳になってもやはりあきらめがつかない。ひとは成長するのか。カラダだけでなく脳や想いもほんとうに成長していくのか。いや、おれはどうなのか、と書くべきか。睡眠がどうしてもとれない。四谷で髪を切ってもらいマッサージを受けながら、指が入らないよ、といわれた。いくたびにそんなことをいわれ、蒲田に戻ってマッサージを受ける。ここ半年以上は、それもさほど効果なし。連続している緊張が主因なのだと、わかってはいるが途切れさせることができずにいる。三菱のころのように、半年続けたら1ヶ月、といった単位で完全に切り放すべきだとわかっていても途切れず。おだやかな話しかたが五分と続かず、ささくれていく。それをとどめられない。疑心暗鬼だけがむやみに増大しつづける。歓びが維持できない。ほんとうに、いちどご破算にしたい。仕事も私生活もすべてリセットしたい。おそすぎるかもしれないが、ほかに手だてがみつからず。ひとを恋う気力もうすらぐばかりである。旅に出たい。おのれの意思を確かめられるなら確かめてみたい。見据えてみたい。日暮れ前に、すでに闇夜のような気分となった。高揚は、一日で消えた。旅行ではなく、旅に出たい。放り出して半年、いや三ヶ月でいい。戻りたいのかどうか問うてみたい。離れてもなお、執着がもてるなら、続けられるはずだから。