何をいまさら「覚有情」。
打ち止めたい。と、いう思いが消えない。ひしが家に帰ってゆくなら、おれはどこへ帰りたいのか?葉の落ちた光景を前に立竦むような気分がいつまでも続いた。北関東特有のさびれた冬の気配が濃密に町をおおって、点灯しはじめた豆電球が去年の夢の跡のようで寂しさをかきたてていた。歳月は人を深めるのか否か。町を、住まいを…。その冬ざれた景色の底でよどんだ会話がいつまでも続いた。屑によって語られる屑の物語が電線に引っかかった迷い凧のように木枯らしに揺れていた。たとえ、場所に思いを注げたとして、こいつらにはムリなのだ、と痛感。痛感しながら、ひとはなぜ情だけで関わってはいけないのか、とガキのような想いに足をすくわれる。帰りの東北道は、沈みかけた冬の三日月が冴え冴えと輝いていた。あばよ、とでかかったそのひとことを、結局は飲み込んで帰ってきてしまったのだ。おれは。それからほぼ2日間、うんざりしながら集中。どこへも出かけず誰とも会わず。集中していれば、世界にこもれてしまうことにうんざりしながら今夜早い時間に脱稿。そしてムービーも同時に荒編アップ。やればできる、とも、こんなものだからできたのだとも。アップしたら会おうとは思っていた。しかし足が止まった。なにがかきたてていたのか、いまとなっては闇。ばからしい、という気分だけが色濃くなっている。季節に負けていくのだろうか。コンビニにタバコと茶を買いに行ったら、漫画本のコーナーにバロンの柔侠伝。思わず手に取ったが、そっと戻した。何をいまさら「覚有情」。