新しい日本の色/参照
新しい日本の色—黄、緑、オレンジ
 伝統は受け継ぐと同時に、新しく創造していくものである。時代が変転し、風土や環境が変化していくのに応じて、人々が前世代から受け継ぎながら、不要な部分を捨て去り、そして新しい部分を創造したり、付加していく。これが伝統なのである。前述した数々の色彩嗜好は、幾星霜の年月を経て、今日まで伝えられた伝統の色である。今なお、この現代にあって、呪術的な色彩の生命は薄れても、視覚言語的な役割や日本人の感性を表現する色として生き続けている色である。しかし、現代には現代にふさわしい、また現代だからこそ出現してきた新しい色彩がある。
 私たちの生活環境のなかで、今、新しく出現してきた色があるだろうか。それは黄色、オレンジ、緑、紫。これらの色は、私たちの先人たちが比較的、人為的に生活のなかで使うことのできなかった、また少なかった色である。黄色、紫色は、かつて高貴な人の色であり、禁色として庶民が使用することの少なかった色である。緑は青の範疇と数えられ、自然には存在したものの、意志的に作り出されることの少なかった色である。そしてオレンジは、赤のバリエーションであり、オレンジが独自な色として認識されたのは、ごく最近のことである。これらの色は、豊富な色材、新素材、視覚言語の多様化、あらゆる商品における新奇性の追求を背景にして、新しい日本の色として、自動車、家電、情報機器、標識、パッケージデザインなどに単独、または無彩色と組み合わされ、新しい色彩として登場してきている。これらの色は従来の伝統色とともに、また現代の新しい色となっていく。