《首領への道》全17巻★
きっかけはスカパーでみた11巻から14巻。
原作となった村上の劇画は刊行時に読んでいた。小馬鹿にして見はじめた。その気分のままに二週に渡って時間を潰した。
映画としては原作通りのマンガである。Vシネマらしいチープで大時代な世界である…

しかし、
小骨が一つ残った。
あらためてレンタルビデオを全巻借りてみた。17巻、30時間余りを通観して引っ掛かっていた小骨が見つかった気がする。
村上の原作を巧妙に利用しながら、このスタッフたちが描き続けたかったのは白竜演じる越智という名のヤクザただ一人だけだったのではないか。首領役の清水健太郎をはじめ登場する9割の役者たちがVシネマ的演技に徹する中で、ひとり白竜だけが異邦人である。ここで演じられる白竜の心象は17巻を過ぎてなお深い霧の底に隠れているように見える。白竜という個性がさらにその謎に深みを添え続けているように見える。
《首領への道》とタイトルされてはいるが、17巻まで見たところ、これは《首領を育てることに賭けた男の道》であり続ける。ふしぎなシリーズである。白竜演じる越智のような役柄を、東映黄金期にはいちども見たことがない。名手笠原ですら描き出せたことはない。なんというか白竜=越智はグローバルスタンダードのような人格を持つヤクザとして描かれているのだ。これって日本じゃあり得ないよな。