「頭を丸めてもよかったんじゃない」
スーツを着、ネクタイを締めて電車に乗った。
冒頭で頭を下げた。
誰かが「頭を丸めてもよかったんじゃない」
と言ったのが聞こえた。
瞬間迷ったが、昨夜、遅くまで東京駅で待っていてくれた二人との約束を必死で思い起こし、のみこんだ。

それがいけなかった。

ひととおりの打ち合わせが終わり
八重洲ブックセンターに向かって歩いているうちに、ぶり返した。

ネクタイを外して捨てた。
タクシーに飛び乗った。

デュッセルドルフの二の舞い。
時間差でわき出てくる怒り。
ただし、隣に倉持カメラマンはいない。
八重洲周辺にいるのがまずいと思い
ひたすら蒲田に逃げ戻った。

熱いシャワーを浴びた。

同じだった。

ひとやすみして、福島に向かい
どこかで渡辺と合流する予定。
せめて、すこしは気分を変えたい。