4.28《夢熊野》読了★★★★★
紀和鏡著/集英社刊

たっぷり時間をかけた。
濃密で豊饒な物語に断続的にひたりながら
堪能。

池宮の《平家》を上中巻と終わった後で読んだせいか
池宮版《平家》のコクの無さが目立った。
政治と寝てしまえる小説家の限界だろう。
それにしても中巻の帯に名の上がった推薦人を眺めていると
いくら日経連載とはいえ、情けない。
媒体向きに書き分ける才能など
広告屋のような仕事をしているから
小泉あたりと底の浅い政治談義をして
名を落とすことになる。

比べてみるのもどうかとは思うが
紀和の《夢熊野》には、
語ろうとするものの志があふれている。

歴史物はつまらないが、
語るべき書き手を得れば玉になる。

熊野という土地の奥深さを紀和の一冊は
みごとにとらえた。
ほんとうに堪能させられた。


今日は4.28。
若い頃は、ヨンニッパと読んだ。
《夢熊野》の終章は、壇ノ浦を経て
奥州の闇に義経主従が消えていくところで幕を閉じる。

白旗を掲げた義経は、その白旗によって討たれた。
血染めの旗色は、鮮烈な紅色となったはず。