ゆめくまの
ヒラクは、開く・拓く・墾く・啓く
などと書くように、
人の集団が形成していく
文明を意識した言葉である。
また、「闇をひらく」
といったような抽象的な
意味もある。
未開の自然の中に
人々が住むということは、
漆黒の闇を
松明の灯で
照らすようなもので、
それが啓蒙であり
開明であった。
もっともカイメイには
晦冥という
字をあてることもあるが、
晦も冥も
暗い
ということなので、
開明とは
まったく逆の
意味になる。

「開明とは、
光なのですね」

「しかし、
それは闇を松明の灯で
照らすようなもの。
そこだけは明るいが、
周囲の闇は
よりいっそう
暗さがきわだつ。
灯がなければ、
闇は闇ではない」

「では
闇のままであった方が
よかったと?」

「いや、
人が生きるということは、
闇をひらくということに
つながります。
《晦冥》を知ることが
すなわち
《開明》である
と申しておきましょう」


-夢熊野-紀和鏡より