外堀ぞいの土手の桜並木のこと
しかし菱沼さんとあの土手の暗やみの底で
なんどもすれ違っていたとは…

十七歳。

ほんとうに怖いものは何もなかった。
ま、怖いものは、今も見当たらないが。
饅頭くらい、か。


それにしてもだ。
ここに名前を書くのは、はばかれるので
やめておくが、めくるカードがピタッビタッと一致していく。


森の奥ではじめて会ったときから
どこか親しみを感じて来たが
それは単にお互いの中にある不良な気分だと思っていた。

不良といえば不良には違いないか。



それにしても飯田橋とはなあ。


仕事ほっぽり出して
市谷の土手の桜の下をひたすら走りたくなった。


捨てたもんじゃねえよな。