2002 07/03 05:06
Category : 日記
熱せられたアスファルトが毎日蜃気楼を東京につくりだしていた。
父が死んだ年の夏。ほぼ毎日、銀座の代理店に通った。
FMの番組企画で、きざなヒゲをはやした取締役の名刺を持つその男を相手に、
意地になって番組の企画を書き続けた。
春に倒れ入院した父が日ごとに衰弱していくのを見ていられず、目の前の仕事にしがみついた。
ラジオは信じられないくらい安かったが、
ひと夏の間、30本は書いたか。
書くために聴いていたFM局から、その夏、桑田佳祐の「月」という曲がよく流れていた。
父は秋の終わりに亡くなった。
その後で、「月」のCDを買い、冬の間よく聴いていた。
オフィスに来る前になにげなく本棚を眺めていて、
すき間に潜り込んで埃をかぶっていたミニCDを見つけた。
1994年の夏のこと。自分の体調も最悪だった。
書き上げた台本は渡辺が綴じて製本してくれ、オフィスの書棚に眠っている。
たしかNECの文豪とかいうとぼけた名前のワードプロセッサーを使っていた。
父の葬儀をすませたその冬に、ワープロをパソコンに変えた。
マックのパフォーマー575。長岡の勧めだった。
冬の三ヶ月、桑田の「月」を何百回も聴きながら、マックを覚えた。
「月」桑田佳祐
遠く遠く海へとくだる
忍ぶ川のほとりを歩き
果ての街にたどりつく頃
空の色が悲しく見える
ふりかえる場所は
はるか遠くなる
やわらかな胸に
抱かれてみたい
きみを見ました
月見る花に
泣けてきました
ああ……
蒼い月が旅路を照らし
長い影に孤独を悟る
人の夢は
浮かんで堕ちて
されど
赤い陽はまた昇る
啼きながら鳥は
何処へ帰るだろう
翔びなれた夜も
ひとりじゃ辛い
きみと寝ました
他人のままで
惚れていました
ああ……
夏の空に
流れる星は
騒ぐ胸をかすめて消えた
波の音に悲しみを知り
白い砂に涙がにじむ
罪深き風が肌を萌やすとき
酔いながら
人は抱かれてみたい
きみと寝ました
月夜の蚊帳で
濡れていました
ああ……
揺れて見えます
今宵の月は
泣けてきました
ああ……
父が死んだ年の夏。ほぼ毎日、銀座の代理店に通った。
FMの番組企画で、きざなヒゲをはやした取締役の名刺を持つその男を相手に、
意地になって番組の企画を書き続けた。
春に倒れ入院した父が日ごとに衰弱していくのを見ていられず、目の前の仕事にしがみついた。
ラジオは信じられないくらい安かったが、
ひと夏の間、30本は書いたか。
書くために聴いていたFM局から、その夏、桑田佳祐の「月」という曲がよく流れていた。
父は秋の終わりに亡くなった。
その後で、「月」のCDを買い、冬の間よく聴いていた。
オフィスに来る前になにげなく本棚を眺めていて、
すき間に潜り込んで埃をかぶっていたミニCDを見つけた。
1994年の夏のこと。自分の体調も最悪だった。
書き上げた台本は渡辺が綴じて製本してくれ、オフィスの書棚に眠っている。
たしかNECの文豪とかいうとぼけた名前のワードプロセッサーを使っていた。
父の葬儀をすませたその冬に、ワープロをパソコンに変えた。
マックのパフォーマー575。長岡の勧めだった。
冬の三ヶ月、桑田の「月」を何百回も聴きながら、マックを覚えた。
「月」桑田佳祐
遠く遠く海へとくだる
忍ぶ川のほとりを歩き
果ての街にたどりつく頃
空の色が悲しく見える
ふりかえる場所は
はるか遠くなる
やわらかな胸に
抱かれてみたい
きみを見ました
月見る花に
泣けてきました
ああ……
蒼い月が旅路を照らし
長い影に孤独を悟る
人の夢は
浮かんで堕ちて
されど
赤い陽はまた昇る
啼きながら鳥は
何処へ帰るだろう
翔びなれた夜も
ひとりじゃ辛い
きみと寝ました
他人のままで
惚れていました
ああ……
夏の空に
流れる星は
騒ぐ胸をかすめて消えた
波の音に悲しみを知り
白い砂に涙がにじむ
罪深き風が肌を萌やすとき
酔いながら
人は抱かれてみたい
きみと寝ました
月夜の蚊帳で
濡れていました
ああ……
揺れて見えます
今宵の月は
泣けてきました
ああ……