深夜の昼食は赤飯幕の内弁当。
しかし、なんだってこんなにさみいのだろう。震えるのでオフィスの窓をいやいや閉める。

神楽坂時代、小石川時代と、オフィスに猫がいた。
そのせいでベランダの窓は1年中開け放してあった。
打合せに来るスタッフ達にはまことに不評であったが、いつか慣れた。

猫は五年前から横須賀の渡辺の実家に転居。

もう必要もないのだが、
いまでも気がつくと窓を開けている。
だから、寒い。

少し前に、渡辺に買ってきてもらった栗泉堂の赤飯幕の内弁当を食べた。お茶は「しみじみ」缶。
本日二食目だから、昼食である。
BGMは「月の砂漠」。

弁当はうまかったかと言えば、んまかった。
ちまちました盛りつけが、妙に夜の寒さとあっていて、ゆっくり咀嚼しながら食った。

食いながら、オフィスにいた猫の飯の食い方を思い出した。
生まれたばかりで段ボールに入れられ、
オフィスのビルの入り口前の桜の木の下に
兄弟二匹で捨てられていた。
春四月。十二年前のちょうど今ごろのこと。
夜、タバコを買いに出たときに、春雨に濡れた満開の桜の下で、
か細い声で啼いていた。
タバコを買って戻ったときもまだ啼いていたので連れて帰った。
1匹は死んでいた。オフィスで渡辺や賢明とミルクを沸かし、スポイトで飲ませたりしていた。
一心不乱で食べているときに、ちよっとちょっかいを出すと、
ガルルーといつもとまったく違う声を出していた。
別に飢えているわけでなかったろうが、
きっと食べることにまじめなやつだったのだろう。

おれにはまったくなつかぬ猫だったが、
渡辺と、カメラマンの倉持さんにはよくなついていた。
倉持さんは横浜育ち、渡辺は横須賀。
潮のにおいが好きなのだろうと思っていた。

赤飯を咀嚼しながら、そんなことを思い出した。


さて、これから資料を読まなくては…