気の晴れる家。
というキーワードを隠しテーマとしていたが、今日の熊谷ロケハンでストーブのある吹き抜け空間を目にした瞬間、これだ、と思った。この空間が現実に撮れれば、明るさを追った方南町がより引き立ってくることを確認できた。
1枚のモノクロ写真を見たときに感じたイメージをはるかに越えていた。
1日が終わって家路をたどり、ドアを開けて疲れたため息を三つほど吐いて、足がふくらんで朝の1.5倍になった靴を腰をかがめて引きはがし、またため息をついてリビングに折れる。その目の前にあの空間が広がる。
ストーブの脇の床には愛犬が眠りこけている。その隣にはお気に入りのシンプルなイス。焔。カバンを持ったままキッチンに向かい、冷蔵庫からよく冷えた缶ビールを取り出す。上着はまだつけたままだ。リビングに戻る。カバンを床に。缶ビールを眠り込んでいた愛犬の額にそっとあてる。目を覚ましじゃれついてくる愛犬を見ながら、上着を脱ぎネクタイをゆるめる。シャツの袖をまくってイスに腰をおろす。缶ビールのフタを開ける。目を閉じて、飲み干す。
あーっと息を吐くと、目を開き、真っすぐにのびた煙突にそって顔を上げる。
夜9時。見上げた吹き抜けの天井に彼が見るのは、果たして何か。
青空。真っ青な空に真っ白な夏雲が湧いている。
気の晴れる家、のひとつの典型だと思った。大森の《アジアンリゾート》を意識したような和のしつらえもおもしろい。
シャーウッド、一皮むけた世界にいけそうだ。

満足である。
しかし、ねむい。