謎の男についての回答
●深夜に届いた質問/スタッフSさんから
 「で、なんでも 知ってる 謎の男性・・・?
 すっごく 惹かれました。彼はいくつくらいの方?
 どこの国の方?どの時代の方?
 なんでそんなに何でも知ってるの?
 ・・興味がつきません」

その男性は、むかし、ホメイニ革命の起きたイランに嫌気がさして、家に代々伝わった手織りのペルシャ絨毯を三枚、金の鞍を乗せた一頭のラクダに積んで、月の砂漠をはるばると越えて亡命したオマール・アザリという名のイスファハンの人である。
サザン朝ペルシャの時代から連綿と続いた学者の家系の15代目の当主で、古代ペルシャ文字の研究家として知られていたとか。
やけに甘いザラメのような砂糖をたっぷりと入れたどろっとしたコーヒーと水タバコとピスタチオを強要する癖のほかは、日なたの子犬のように正しくかわいい学者である。
我が国の学者と異なり、なにしろサザン朝ペルシャの血を引く方だから、その学識たるやたいへんなものなのだ。なにしろ彼は、毎日毎日、あのみみずののたくったような古代ペルシャ文字で書かれた古本を三冊ずつ読破するのだから。
歳はたぶん四十代のはずだが、濃いヒゲのため、判別が難しい。
もし紹介してほしいなどという希望があるなら、どうぞサーカス団のヒゲ男・わたなべくんに問い合わせていただきたい。
気が向けば、きっと教えてくれる。はず。
なおアザリ氏は「コーヒー・ルンバ」が大好きだとか。
風貌はル・コントの「髪結いの亭主」の主人公と少し似ているわね、と広尾の犬好きのミセスが有栖川公園の砂場で砂漠ごっこをしながら話していたことがある。どんなもんだろ。