2001 10/12 02:32
Category : 日記
オマール・アザリ氏についてちょっとした情報が寄せられたので
記録しておきたい。
《わたしは奥伊豆のそのまた奥の方にある小さな港町で暮らす女です。一羽のオウムと暮らしながら海猫食堂というちっぽけな店をやってます。お客は小魚をとる以外にはギャンブルにしか目がないような土地のしがない漁師たち。ごくたまにですが、道をまちがえて腹を空かした旅の人がため息をつきながら寄っていくこともあります。おたずねのあったアザリさんとであったのは二年前の春でした。港のはずれに打ち捨てられて海猫の巣になっている廃船を見下ろす小高い丘の上の、村で一本だけの八重桜がざわっと吹いた春風に重たげな花びらを散らせていた頃のこと。アザリという方は、左手に茶色いカバンを下げ、右の肩にあざやかな色をした見たこともないような大きなオウムをとまらせて、八重桜の花吹雪の中をふらりとふらりと歩いていました。そのときのオウムが、いま店でいっしょに暮らしている「さよなら」です。えっ、「さよなら」という名前は変ですか?でもね、どうしたことかこのオウムは「さよなら」しか言ってくれないんですよ。朝から晩まで、客が来ると「さよなら」「さよなら」って話しかけるから、ばかな漁師達にいつのまにか「さよなら」なんて呼ばれるようになってね。だから名前は「さよなら」。
アザリさんのことでしたね。すこし長くなるかも知れないけど、お話しますね》
メールはここまでで突然中断していた。
もしかしたらギャンブル好きの漁師達がやってきたのか、
あるいはまた小高い丘の方から風に運ばれて
新しい旅の人が歩いてきたのかも知れない。
海猫食堂の女と、謎の男アザリの間にどんなことがあったのか、
続きのメールを待つことにしよう。
記録しておきたい。
《わたしは奥伊豆のそのまた奥の方にある小さな港町で暮らす女です。一羽のオウムと暮らしながら海猫食堂というちっぽけな店をやってます。お客は小魚をとる以外にはギャンブルにしか目がないような土地のしがない漁師たち。ごくたまにですが、道をまちがえて腹を空かした旅の人がため息をつきながら寄っていくこともあります。おたずねのあったアザリさんとであったのは二年前の春でした。港のはずれに打ち捨てられて海猫の巣になっている廃船を見下ろす小高い丘の上の、村で一本だけの八重桜がざわっと吹いた春風に重たげな花びらを散らせていた頃のこと。アザリという方は、左手に茶色いカバンを下げ、右の肩にあざやかな色をした見たこともないような大きなオウムをとまらせて、八重桜の花吹雪の中をふらりとふらりと歩いていました。そのときのオウムが、いま店でいっしょに暮らしている「さよなら」です。えっ、「さよなら」という名前は変ですか?でもね、どうしたことかこのオウムは「さよなら」しか言ってくれないんですよ。朝から晩まで、客が来ると「さよなら」「さよなら」って話しかけるから、ばかな漁師達にいつのまにか「さよなら」なんて呼ばれるようになってね。だから名前は「さよなら」。
アザリさんのことでしたね。すこし長くなるかも知れないけど、お話しますね》
メールはここまでで突然中断していた。
もしかしたらギャンブル好きの漁師達がやってきたのか、
あるいはまた小高い丘の方から風に運ばれて
新しい旅の人が歩いてきたのかも知れない。
海猫食堂の女と、謎の男アザリの間にどんなことがあったのか、
続きのメールを待つことにしよう。