2001 09/27 04:40
Category : 日記
《女鬼》を読んだ。
ゆうべ渡辺くんがオフィスの外で月を撮っていて伊藤さんに会った。
伊藤さんは学校で子供たちに月の満ち欠けを教えるのに困っていたらしい。オフィスにやってきて《月》のコレクションを見せたら、ぜひ学校で子供たちに見せたいという。快諾。そのお礼というわけでもないだろうが、探していて見つからなかった今井保之の《女鬼》を貸してくれた。春の引っ越しの時に他の五冊の絵本は出てきたのだがこの《女鬼》だけが見当たらなかったので、あきらめかけていた。
さっき読み終わった。涙が止まらなかった。この手書きの童話をはじめて読んだのは30歳の頃だった。仕事をせずにぶらぶらと遊んでいたころに出会って、激しくうたれたことをいまもあざやかに記憶している。
いつか機会があれば、映像にしたいと考えていた。
デジタル・ジャパネスクをスタートするにあたって思い描いたのがこの《女鬼》だった。8月5日に真っ暗やみの湯の花で月の出を待ちながら浮かんだのが、この《女鬼》だった。
ついに、手に入れた。おれの手に戻ってきた。八重洲ブックセンターで20冊あまりまとめ買いして、辻と二人であちこちに配った。オフィスを始めるにあたって、最低限守ることがあるとすれば、この今井の書いた《女鬼》だよな、とよく二人で神楽坂で話した。
いつか映像化権をとろう、と約束しながら果たせずに今に至った。
同じころ、映像にしてみたいと考えていた佐々木洋一の詩集《未来ササヤンカ村》と福島泰樹の短歌世界は、十年前にひとつのカタチにした。
あとは《パパラギ》とこの《女鬼》である。
《女鬼》をデジタル・ジャパネスクシリーズの幕開けの一巻とできれば、おれの目論見はほぼ成功するだろう。エンドレスシリーズの冒頭に《女鬼》を据えさえできれば…
そう願って十年が過ぎた。
読み直してみて、胸の底に沈めた想いはほんのわずかさえもずれても狂ってもいなかったことを確認できた。《女鬼》。ついに再会した。
24日に抜け出たと実感してから四日。平穏な時間をこの三ヶ月ではじめて過ごした。
その行き着いた先が、ここにある。《女鬼》。祝杯をあげたい。デジタル・ジャパネスクシリーズの制作を通して、いつか出会うことになるすべての人に向かって。乾杯。
今井はあとがきにこう書き残している。
『どんな人にも
大人にも子供にも自分の内だけに
しまっておかなければならないことがきっとあります。
他人の内に伝わらないものが、
そんなものを自分の内で何度も何度もくりかえし
想いおこしていくとひとつの話がうまれると思うのです。
時代に合った新しい話はどううしてもかけません。
ひとりの人間の内で
いつまでも持ち続けている心をかきたいと思います。
新しいものはいつか古くなります。
かわらずあるものをつかまえたいと思うのです。
はじめに、にもかきましたが読んでくださった皆様と
一回のぎりぎりのこの本を創りたい。
あなたがもう少し大人になったとき、
そのときにも一回のぎりぎりで出あえる本でありたいと思います。
さよなら このことばの響きは胸の内で痛くて仕方ありません。
いきぐるしくなって口ごもってしまいます。
私はどうしてもさよならが上手にいえないのです。
どうぞごめんして下さい』
ゆうべ渡辺くんがオフィスの外で月を撮っていて伊藤さんに会った。
伊藤さんは学校で子供たちに月の満ち欠けを教えるのに困っていたらしい。オフィスにやってきて《月》のコレクションを見せたら、ぜひ学校で子供たちに見せたいという。快諾。そのお礼というわけでもないだろうが、探していて見つからなかった今井保之の《女鬼》を貸してくれた。春の引っ越しの時に他の五冊の絵本は出てきたのだがこの《女鬼》だけが見当たらなかったので、あきらめかけていた。
さっき読み終わった。涙が止まらなかった。この手書きの童話をはじめて読んだのは30歳の頃だった。仕事をせずにぶらぶらと遊んでいたころに出会って、激しくうたれたことをいまもあざやかに記憶している。
いつか機会があれば、映像にしたいと考えていた。
デジタル・ジャパネスクをスタートするにあたって思い描いたのがこの《女鬼》だった。8月5日に真っ暗やみの湯の花で月の出を待ちながら浮かんだのが、この《女鬼》だった。
ついに、手に入れた。おれの手に戻ってきた。八重洲ブックセンターで20冊あまりまとめ買いして、辻と二人であちこちに配った。オフィスを始めるにあたって、最低限守ることがあるとすれば、この今井の書いた《女鬼》だよな、とよく二人で神楽坂で話した。
いつか映像化権をとろう、と約束しながら果たせずに今に至った。
同じころ、映像にしてみたいと考えていた佐々木洋一の詩集《未来ササヤンカ村》と福島泰樹の短歌世界は、十年前にひとつのカタチにした。
あとは《パパラギ》とこの《女鬼》である。
《女鬼》をデジタル・ジャパネスクシリーズの幕開けの一巻とできれば、おれの目論見はほぼ成功するだろう。エンドレスシリーズの冒頭に《女鬼》を据えさえできれば…
そう願って十年が過ぎた。
読み直してみて、胸の底に沈めた想いはほんのわずかさえもずれても狂ってもいなかったことを確認できた。《女鬼》。ついに再会した。
24日に抜け出たと実感してから四日。平穏な時間をこの三ヶ月ではじめて過ごした。
その行き着いた先が、ここにある。《女鬼》。祝杯をあげたい。デジタル・ジャパネスクシリーズの制作を通して、いつか出会うことになるすべての人に向かって。乾杯。
今井はあとがきにこう書き残している。
『どんな人にも
大人にも子供にも自分の内だけに
しまっておかなければならないことがきっとあります。
他人の内に伝わらないものが、
そんなものを自分の内で何度も何度もくりかえし
想いおこしていくとひとつの話がうまれると思うのです。
時代に合った新しい話はどううしてもかけません。
ひとりの人間の内で
いつまでも持ち続けている心をかきたいと思います。
新しいものはいつか古くなります。
かわらずあるものをつかまえたいと思うのです。
はじめに、にもかきましたが読んでくださった皆様と
一回のぎりぎりのこの本を創りたい。
あなたがもう少し大人になったとき、
そのときにも一回のぎりぎりで出あえる本でありたいと思います。
さよなら このことばの響きは胸の内で痛くて仕方ありません。
いきぐるしくなって口ごもってしまいます。
私はどうしてもさよならが上手にいえないのです。
どうぞごめんして下さい』