2001 02/09 00:48
Category : 日記
たとえばあなたは、子供の頃から外国の植物図鑑に夢中だった。
…だからかな。あなたが楽しむガーデニングライフには、
みんなが見たことのないハーブがあったりする。
あなたは夫の陶芸が物好きから、ほんのすこしだけ先にいった
ように感じている。出会ったばかりの頃の夫とよく陶芸展を
見に行ったことがあったことを思い出しながら、
夫の新しい作品に、最近こりはじめた手づくりパスタを
盛りつけてみたいと考える。
この離れ風のアトリエは、夫にとって陶芸ルームであり、
別なあなたの時間では、ステンドグラス工房であったりとか…
土間のある開放された空間は、
あなたや夫が実現したかった、もうひとつの自分の時間を刺激する。
もちろん、刺激と同じくらい心をほぐす時間も欠かせない…
遅めのパスタランチの前に、訪れた友人に
夫がお茶をたてて歓迎したいとはりきった。
ほんとうは、しつらえたばかりの着物を披露したかったのだ、
とあなたは知っている。真剣な面持ちの夫を目のすみにとらえ、
あなたは笑いをこらえるのに必死だったりする。
焼き物といい、茶の湯といい、情報技術のパイオニアを自負する夫の
和テイストへのこだわりはこのごろ目ざましい。
このまえは、雑誌を眺めながら古民家の別荘が欲しいね、
などと言っていた。
和を感じさせるものへのこだわりは、じつはあなたも同じだったりする。
数年前からはじめたかな文字だが、この頃は古墨のかすれぐあいに
魅かれている。にじみの度合いでニュアンスがまったく異なってしまう
そのゆくえのさだまらない感じが合うのかも知れないと思っている。
ボランティアで親しくなったあなたの友人は
あなたよりずっと若いのに妙に気持ちが通いあう。
年の離れた姉妹のようだと言われることもある。
あなたが夫と二十五回目の結婚記念の年に行った南イタリアの
小さなレストランで教えてもらった花のラザニアの話をすると
ぜひ教えて欲しいと頼まれていた。
きょうは夫の大皿完成披露を兼ねて、
彼女と一緒に手づくりパスタと花のラザニアづくりを楽しんでいる。
夫は焼き物を自慢したいらしく、テーブルセットに夢中である。
友人は来るたびにキッチンのつくりに感心しきりだ。
そのことに意外に嬉しがっている自分に気づいたあなたは、
花のように笑ったりしている。
別な日のあなたと夫。夫は自分で食器を焼くようになって、
前よりもよくあとかたづけをするようになった。
そのこともあなたにとっては、ほほ笑みの素になっている。
二階のオープンスペースで
あなたはキャンバスに向かい
天井からの自然光をいかして絵を描くことも好きだ。
夫は抽象的すぎるというが、
友人はいつも褒めてくれる。
女同士だからこそわかりあえるのかな、
と思ってみたりしている。
朝と休みの日に、
夫は犬の散歩を欠かさない。
そのせいか、愛犬はほんのすこしだけ
夫に気を許しているように思う。
ときどき夫があなたの絵の下で仕事の続きをするのは、
抽象的なのが幸いしてるのね、とあなたは思う。
夫は五十歳になってからピアノをはじめた。
理由はショパンのノクターンをどうしても
自分で弾いてみたかったのだ、とか。中学生の時に
音楽の先生が弾いてくれたのを聴いてからだという。
あなたは、その先生はきっと若くてきれいだったのね、と
たずねたことがあるが、夫は笑って答えなかった。
今夜は二人の聴き手を前に、夫はとても誇らしげである。
あなたもまた、楽器を弾く。大学時代まで続けていた
チェロを四十歳の秋に、はじめた。自分に約束していることは
四十代のうちに、無伴奏の一番プレリュードを
ものにしたいということだ。道は遠いようにも近いようにも
思えるが、譜面に向かっているときは、いつも晴れやかだ。
…だからかな。あなたが楽しむガーデニングライフには、
みんなが見たことのないハーブがあったりする。
あなたは夫の陶芸が物好きから、ほんのすこしだけ先にいった
ように感じている。出会ったばかりの頃の夫とよく陶芸展を
見に行ったことがあったことを思い出しながら、
夫の新しい作品に、最近こりはじめた手づくりパスタを
盛りつけてみたいと考える。
この離れ風のアトリエは、夫にとって陶芸ルームであり、
別なあなたの時間では、ステンドグラス工房であったりとか…
土間のある開放された空間は、
あなたや夫が実現したかった、もうひとつの自分の時間を刺激する。
もちろん、刺激と同じくらい心をほぐす時間も欠かせない…
遅めのパスタランチの前に、訪れた友人に
夫がお茶をたてて歓迎したいとはりきった。
ほんとうは、しつらえたばかりの着物を披露したかったのだ、
とあなたは知っている。真剣な面持ちの夫を目のすみにとらえ、
あなたは笑いをこらえるのに必死だったりする。
焼き物といい、茶の湯といい、情報技術のパイオニアを自負する夫の
和テイストへのこだわりはこのごろ目ざましい。
このまえは、雑誌を眺めながら古民家の別荘が欲しいね、
などと言っていた。
和を感じさせるものへのこだわりは、じつはあなたも同じだったりする。
数年前からはじめたかな文字だが、この頃は古墨のかすれぐあいに
魅かれている。にじみの度合いでニュアンスがまったく異なってしまう
そのゆくえのさだまらない感じが合うのかも知れないと思っている。
ボランティアで親しくなったあなたの友人は
あなたよりずっと若いのに妙に気持ちが通いあう。
年の離れた姉妹のようだと言われることもある。
あなたが夫と二十五回目の結婚記念の年に行った南イタリアの
小さなレストランで教えてもらった花のラザニアの話をすると
ぜひ教えて欲しいと頼まれていた。
きょうは夫の大皿完成披露を兼ねて、
彼女と一緒に手づくりパスタと花のラザニアづくりを楽しんでいる。
夫は焼き物を自慢したいらしく、テーブルセットに夢中である。
友人は来るたびにキッチンのつくりに感心しきりだ。
そのことに意外に嬉しがっている自分に気づいたあなたは、
花のように笑ったりしている。
別な日のあなたと夫。夫は自分で食器を焼くようになって、
前よりもよくあとかたづけをするようになった。
そのこともあなたにとっては、ほほ笑みの素になっている。
二階のオープンスペースで
あなたはキャンバスに向かい
天井からの自然光をいかして絵を描くことも好きだ。
夫は抽象的すぎるというが、
友人はいつも褒めてくれる。
女同士だからこそわかりあえるのかな、
と思ってみたりしている。
朝と休みの日に、
夫は犬の散歩を欠かさない。
そのせいか、愛犬はほんのすこしだけ
夫に気を許しているように思う。
ときどき夫があなたの絵の下で仕事の続きをするのは、
抽象的なのが幸いしてるのね、とあなたは思う。
夫は五十歳になってからピアノをはじめた。
理由はショパンのノクターンをどうしても
自分で弾いてみたかったのだ、とか。中学生の時に
音楽の先生が弾いてくれたのを聴いてからだという。
あなたは、その先生はきっと若くてきれいだったのね、と
たずねたことがあるが、夫は笑って答えなかった。
今夜は二人の聴き手を前に、夫はとても誇らしげである。
あなたもまた、楽器を弾く。大学時代まで続けていた
チェロを四十歳の秋に、はじめた。自分に約束していることは
四十代のうちに、無伴奏の一番プレリュードを
ものにしたいということだ。道は遠いようにも近いようにも
思えるが、譜面に向かっているときは、いつも晴れやかだ。