スコット・トゥローの囮弁護士
「囮弁護士」S.トゥロー著/二宮馨訳/文藝春秋刊行

いままでトゥローのベスト1は「立証責任」だと思ってきたが、それも今夜までのこと。これをリーガルサスペンスというのは恐れ入るが。
絶望的なまでの退嬰的な愛の交叉具合にたじろがされた。
こういう乾ききった凄みは歴史の深いヨーロッパだと逆立ちしても描けないんだよな。
ヨーロッパにはわかりやすい絶望は生まれても、アメリカが生みだす複雑性は存在しないから。ヨーロッパにいかれる連中はみんなそこのところでごまかされちゃうけど。

しかし文春の仕立てにしてはひどい造本だった。行詰め1行多くしたことが可読性を奪ってしまい、
三流の出版社のような仕上がりぶりだ。

さらに、
「PERSONAL INJURIES」で「囮弁護士」はないだろう。気高い内容もかたなしである。