2009 08/02 18:44
Category : 日記
今日は、私が毎年楽しみにしている大蔵流の茂山家の「納涼 茂山狂言祭2009」を見に行ってきた。
茂山家と言えば私が大好きな京都の狂言師の家で、お豆腐狂言と呼ばれる気軽に誰でも楽しめる狂言で人間国宝の茂山千作さんを頂点に数々の人気狂言師のいる流派である。
特に、毎年夏に行われる納涼狂言祭はリクエスト狂言とも呼ばれ、一年前から狂言の曲目や演者をリクエストしてもらって決めるシステムが人気でもあり、茂山家独特の人気公演でもある。
私は普段は日曜はしんどいので土曜日に見に行くことが多いのだが、今回は今日の公演には「茂山千作」さんが出られるのでどうしても見たいのと、曲目も私の好きな「水掛聟」と「仁王」があるのでこの公演日に見に行くことにしたのだった。
会場の大槻能楽堂に入ると、満席で立ち見が出るほどの超満員で地方からツアーで見に来てられる方たちも居るくらいの大盛況だった。
狂言で能楽堂に立ち見がでるんだからね、お客さんの七割くらいは女性だし、それだけ茂山家が人気があると言う事だろう。、
○お話:茂山千之丞
はじめは、茂山千之丞さんのトーク。
主に、今日の出し物の「素狂言 九十九髪」に関する解説だった。
○素狂言「九十九髪」(つくもがみ)
作・高橋睦郎 演出・茂山千之丞
老女:茂山千作
三郎:茂山千三郎
使者:茂山七五三
後見:井口竜也
百歳に手が届きそうな老婆は在原業平の噂に恋をして、三男の三郎に業平と一夜を供に出来るように頼ませた。
老婆を哀れに思って業平は願いを聞いて、一晩だけの契りを交わして朝になると逃げるように帰ってしまった。
老婆はなまじ一夜を供にしたために、業平がもっと恋しくなり、もう一度供に出来ないかと三郎に相談していた。
一方、在原業平は大事な烏帽子を老婆から逃げ帰る時に忘れてしまい、使者に命じて取りに行かせるのだった。
素狂言と言うのは朗読劇のような感じで特別な衣装や小道具を使わずに、見台に置いた台本を読みながら話を進めていく狂言である。
もとは、普通の狂言として「九十九髪」は書かれたそうであるが、茂山千作さんがどうしても長い本を覚えるのが嫌だと言う事で(笑)、覚えずに本を読む素狂言にしたら割と評判が良かったので今回もリクエストに入ったそうである。
台詞だけの狂言であるが、それでも茂山千作さんの味と言うか面白みが充分に表れている曲であった。
できたら、次は普通の狂言として見てみたいと思ってしまう。
○「水掛聟」(みずかけむこ)
聟:茂山千五郎
舅:茂山千之丞
女房:茂山童司
後見:増田浩紀
お百姓の婿が自分の田の見回りに来ると、自分の田の水が隣の舅の田に取られている事に気づく。
そこで婿は、畦を切って水を自分の田に取り戻し、よそを見回りに行く。
次に、同じように田の見回りに来た舅は、自分の田に水がないのに気づき、ふたたび婿の田から水を引き返すと、水を取られないように番をする。
そこへ再び見回りに戻ってきた婿が現れると、また自分の田の水が舅の田に取られているので、もう一度自分の田に水を引こうとし、舅に見つかり口論になる。
舅は
「舅の田に、水がなければ可哀相にと水を別けるのが婿だろう」と言うと、婿も負けずに
「婿の田に水が無ければ、自分の田の水を別けても助けるのが舅だろう」と返す。
互いに畦を切って水を引こうと争ううちに、婿が舅の顔に泥水をかけてしまう。
二人は水をかけあったり、泥を顔になすりあったりし、しまいにとっくみあいになる。
その話を聞いた妻が駆けつけ、仲裁するが、最後は夫の味方をし、二人で舅を打ち倒して仲良く帰って行く。
舅は、「来年からは祭りに呼ばないぞ」と負け惜しみを言って帰って行く。
農民にとって深刻な問題である水争いだが、婿と舅がまるで幼児の喧嘩のように争う趣向であるが、水や泥をかけあうところは、地方に伝わる泥掛け祭りなどの神事を思わせる。
○「仁王」(におう)
バクチ打ち:茂山あきら
仲間の男:茂山茂
参詣人:丸石やすし・茂山童司・茂山千三郎・茂山千五郎・茂山千之丞・茂山七五三
後見:島田洋海・井口竜也
バクチ打ちの男は、賭けに負けて財産も無くなってしまいどうしていいか判らずに、仲間の男の所に相談に行く。
すると仲間の男は、バクチ打ちの男を仁王に化けさせてお供え物を騙し取ろうと持ちかける。
そこで、バクチ打ちの男に仁王らしく扮装させて、仲間の男は近所に「仁王が降臨した」と触れ回りて周る。
バクチ打ちの男が仁王に化けて待っていると、仲間の男が、多くの参詣人を連れて来て、参詣人はそれぞれに、祈願に合わせたお供え物をして祈願するので、二人はお供え物で大儲けできる。
参詣人は、知り合いに足の悪い男がいるが、その足も祈願で治るかと聞き、どんな病気でも治ると言われて、明日に連れてくると言い帰って行く。
お供え物で二人で儲けたのでバクチ打ちの男は明日もやろうと持ちかけるが、仲間の男は「何度もやるとばれてしまう」と注意する。
しかし、バクチ打ちの男は味をしめて、もう一度やろうと思い、またも仁王に化けることにした。
やがて、昨日の参詣人と供に足の不自由な参詣人が足を治してもらおうと現れて、大きな草鞋を供えると、自分の不自由な足と同じ仁王の足を撫でて祈願をした。
仁王に化けたバクチ打ちは、足をさすられて堪えきれずに動いてしまい、足の悪い参詣人と目が合ってしまう。
さては偽物かと、参詣人がみんな集まって仁王をくすぐると仁王に化けた男はたまらずに逃げ出してしまう。
狂言のお供え物や祈願がそれぞれのアドリブなので、そういうお供え物で何を祈願するかが面白い所である。
「早く梅雨を明けさせて新型ウィルスも抑えて欲しい」
「ビールやお酒をたくさん呑んでも大丈夫なように肝臓を強くして欲しい」
「阪神が優勝するように」
などなど、時勢に合わせたネタとか個人的な願いで、それぞれがアドリブを考えてくるのが面白い。
仁王で動いてはいけない茂山あきらさんの様子と合わせて楽しい狂言である。
以上が今日の狂言であるが、私が狂言を見るようになったきっかけは八坂神社での、学生さんたちの奉納狂言を見て興味を持ったからだが、ここまで狂言にはまっていったのは茂山家の狂言と出会って大好きになったからである。
中でも、やはり茂山千作さんは素人の私が見ても凄いと思うよ、ほんとに人間国宝だと思う。
御高齢で千作さんの狂言を見れる機会も少なくなってきたのは残念であるが、今日も足がお悪いように見えたのが気になった。
それでも、まだまだお元気そうなので、これからも狂言の舞台に立ち続けて欲しいと願うばかりである。
茂山家と言えば私が大好きな京都の狂言師の家で、お豆腐狂言と呼ばれる気軽に誰でも楽しめる狂言で人間国宝の茂山千作さんを頂点に数々の人気狂言師のいる流派である。
特に、毎年夏に行われる納涼狂言祭はリクエスト狂言とも呼ばれ、一年前から狂言の曲目や演者をリクエストしてもらって決めるシステムが人気でもあり、茂山家独特の人気公演でもある。
私は普段は日曜はしんどいので土曜日に見に行くことが多いのだが、今回は今日の公演には「茂山千作」さんが出られるのでどうしても見たいのと、曲目も私の好きな「水掛聟」と「仁王」があるのでこの公演日に見に行くことにしたのだった。
会場の大槻能楽堂に入ると、満席で立ち見が出るほどの超満員で地方からツアーで見に来てられる方たちも居るくらいの大盛況だった。
狂言で能楽堂に立ち見がでるんだからね、お客さんの七割くらいは女性だし、それだけ茂山家が人気があると言う事だろう。、
○お話:茂山千之丞
はじめは、茂山千之丞さんのトーク。
主に、今日の出し物の「素狂言 九十九髪」に関する解説だった。
○素狂言「九十九髪」(つくもがみ)
作・高橋睦郎 演出・茂山千之丞
老女:茂山千作
三郎:茂山千三郎
使者:茂山七五三
後見:井口竜也
百歳に手が届きそうな老婆は在原業平の噂に恋をして、三男の三郎に業平と一夜を供に出来るように頼ませた。
老婆を哀れに思って業平は願いを聞いて、一晩だけの契りを交わして朝になると逃げるように帰ってしまった。
老婆はなまじ一夜を供にしたために、業平がもっと恋しくなり、もう一度供に出来ないかと三郎に相談していた。
一方、在原業平は大事な烏帽子を老婆から逃げ帰る時に忘れてしまい、使者に命じて取りに行かせるのだった。
素狂言と言うのは朗読劇のような感じで特別な衣装や小道具を使わずに、見台に置いた台本を読みながら話を進めていく狂言である。
もとは、普通の狂言として「九十九髪」は書かれたそうであるが、茂山千作さんがどうしても長い本を覚えるのが嫌だと言う事で(笑)、覚えずに本を読む素狂言にしたら割と評判が良かったので今回もリクエストに入ったそうである。
台詞だけの狂言であるが、それでも茂山千作さんの味と言うか面白みが充分に表れている曲であった。
できたら、次は普通の狂言として見てみたいと思ってしまう。
○「水掛聟」(みずかけむこ)
聟:茂山千五郎
舅:茂山千之丞
女房:茂山童司
後見:増田浩紀
お百姓の婿が自分の田の見回りに来ると、自分の田の水が隣の舅の田に取られている事に気づく。
そこで婿は、畦を切って水を自分の田に取り戻し、よそを見回りに行く。
次に、同じように田の見回りに来た舅は、自分の田に水がないのに気づき、ふたたび婿の田から水を引き返すと、水を取られないように番をする。
そこへ再び見回りに戻ってきた婿が現れると、また自分の田の水が舅の田に取られているので、もう一度自分の田に水を引こうとし、舅に見つかり口論になる。
舅は
「舅の田に、水がなければ可哀相にと水を別けるのが婿だろう」と言うと、婿も負けずに
「婿の田に水が無ければ、自分の田の水を別けても助けるのが舅だろう」と返す。
互いに畦を切って水を引こうと争ううちに、婿が舅の顔に泥水をかけてしまう。
二人は水をかけあったり、泥を顔になすりあったりし、しまいにとっくみあいになる。
その話を聞いた妻が駆けつけ、仲裁するが、最後は夫の味方をし、二人で舅を打ち倒して仲良く帰って行く。
舅は、「来年からは祭りに呼ばないぞ」と負け惜しみを言って帰って行く。
農民にとって深刻な問題である水争いだが、婿と舅がまるで幼児の喧嘩のように争う趣向であるが、水や泥をかけあうところは、地方に伝わる泥掛け祭りなどの神事を思わせる。
○「仁王」(におう)
バクチ打ち:茂山あきら
仲間の男:茂山茂
参詣人:丸石やすし・茂山童司・茂山千三郎・茂山千五郎・茂山千之丞・茂山七五三
後見:島田洋海・井口竜也
バクチ打ちの男は、賭けに負けて財産も無くなってしまいどうしていいか判らずに、仲間の男の所に相談に行く。
すると仲間の男は、バクチ打ちの男を仁王に化けさせてお供え物を騙し取ろうと持ちかける。
そこで、バクチ打ちの男に仁王らしく扮装させて、仲間の男は近所に「仁王が降臨した」と触れ回りて周る。
バクチ打ちの男が仁王に化けて待っていると、仲間の男が、多くの参詣人を連れて来て、参詣人はそれぞれに、祈願に合わせたお供え物をして祈願するので、二人はお供え物で大儲けできる。
参詣人は、知り合いに足の悪い男がいるが、その足も祈願で治るかと聞き、どんな病気でも治ると言われて、明日に連れてくると言い帰って行く。
お供え物で二人で儲けたのでバクチ打ちの男は明日もやろうと持ちかけるが、仲間の男は「何度もやるとばれてしまう」と注意する。
しかし、バクチ打ちの男は味をしめて、もう一度やろうと思い、またも仁王に化けることにした。
やがて、昨日の参詣人と供に足の不自由な参詣人が足を治してもらおうと現れて、大きな草鞋を供えると、自分の不自由な足と同じ仁王の足を撫でて祈願をした。
仁王に化けたバクチ打ちは、足をさすられて堪えきれずに動いてしまい、足の悪い参詣人と目が合ってしまう。
さては偽物かと、参詣人がみんな集まって仁王をくすぐると仁王に化けた男はたまらずに逃げ出してしまう。
狂言のお供え物や祈願がそれぞれのアドリブなので、そういうお供え物で何を祈願するかが面白い所である。
「早く梅雨を明けさせて新型ウィルスも抑えて欲しい」
「ビールやお酒をたくさん呑んでも大丈夫なように肝臓を強くして欲しい」
「阪神が優勝するように」
などなど、時勢に合わせたネタとか個人的な願いで、それぞれがアドリブを考えてくるのが面白い。
仁王で動いてはいけない茂山あきらさんの様子と合わせて楽しい狂言である。
以上が今日の狂言であるが、私が狂言を見るようになったきっかけは八坂神社での、学生さんたちの奉納狂言を見て興味を持ったからだが、ここまで狂言にはまっていったのは茂山家の狂言と出会って大好きになったからである。
中でも、やはり茂山千作さんは素人の私が見ても凄いと思うよ、ほんとに人間国宝だと思う。
御高齢で千作さんの狂言を見れる機会も少なくなってきたのは残念であるが、今日も足がお悪いように見えたのが気になった。
それでも、まだまだお元気そうなので、これからも狂言の舞台に立ち続けて欲しいと願うばかりである。