夢のなかで 
あの夏の暑い日、痩せ細り青白い顔をした母が言った。
「桃が食べたい。」か細い声で呟いた。

その周りには叔母や母の友達もお喋りしながら
桃を食べていたが、何故か、母だけが桃を食べずに
出がらしのお茶を飲んでいた。

夢の中の私は、「お母さんにも桃をあげて!」と
皆に言ったつもりでも、自分で行動する事は出来なかった。

何もしてやれずにじっと見ていただけで
哀れな母の姿を思い、糖尿で喉が渇いているのだから、

そして亡くなる数年前と判っていたら
好きな物を食べさせれば良かったと悔やむばかり。

今朝、そんな夢を見て涙がぼろぼろ落ちて眼が覚めた。
窓の外も雨が降り、ベランダに雨の雫がいっぱいしがみ付き、
持ちこたえられない力のない雫は、地上に落ちていく。

もっと体力が有ったなら、もっと近くに私が住んで居たら
母は、今も生きていたかも知れない。

温暖なこの街も、今日は雨ふりのためか気温よりも
少し涼しく感じる。

雨が大地のほこりを綺麗に洗い流してくれ、
表通りを歩いた時も空気が澄んだ感じがして
足取りも軽く住まいに帰って来た。

♪ 雨、雨、ふれふれ母さんが蛇の目でお迎え嬉しいな、
ぴっちぴっちちゃぷちゃぷらんらんらん。
「雨ふり」北原白秋作詞、中山晋平作曲。