水の音 Vol.4 03.05.21
 昨日の件で、連絡していた方の一人からメールが入って、招待状が届きましたとのコト。昨日の今日で届くっていうのはいったい何なんだろう。と思いましたが、素直に羨ましかったです。
 仕事に片付く目処がついたころ、ふと財布を覗くと、3桁前半くらいの金額しか入っていませんでした。散々迷った挙句、会社の先輩に3000円ほど貸していただいて、渋谷へと向かいました。
 渋谷は道玄坂をグングン登り、ON AIR WESTに辿り着きました。開場時間ギリギリなので、会場前には結構な数の人が集まっていました。私が到着してものの数分で整列開始。ここでちょっと見覚えのある顔を見かけました。
 私の入場は開場前に集まっていた人の中ではもう終わりの方だったので、今回は座れないかな?と思ったのですが、3分の2が塞がった程度で、まばらにではありますが、まだまだ空席がありました。後ろから2列目に先ほど見かけた人の姿を発見、隣が開いていたので、そこに座ることにしました。
 ちょっとしてから、この方(Mさんとしておきましょう)に声を掛けてみることにしました。名前を呼んだらビックリしていました(笑)。挨拶したあとはしばらく沈黙していたのですが、やがてMさんの方から声を掛けてくれたので、今日のライブのことを話しました。開演までは30分近くあったので、音楽の趣味などずいぶんイロイロと話ができました。今日、出演する加藤いづみのファンだということは知っていたのですが、他にも、ともすると懐かしい名前が出てきて、通ってきた道が似通っていることが分かり、Mさんにも「こんな話ができる人いませんよ」と言われるほどに、とても盛りあがりました。また、Mさんによると、加藤いづみがライブでしか歌っていない歌があるらしく、それがすごく好きなので、今日はそれを聞ければいいと言うので、どんな曲だろうと期待が高まりました。
 そうこうしているうちに会場の客電が落ちて、いよいよ一組目の開始です

水の音 Vol.4 at ON AIR WEST
 一組目として登場したのは宮原永海です。いつもと違っていたののは、どちらかといえばウェービィだった印象のあった、アップしていることの多かった髪にストレートパーマが当てられていたこと、やや遠い間合いから、暗い中で見上げるように見ると、いつもより各段にキレイに見えました。
 バンドはギターとパーカッションによるアコースティックセッション。私の一番好きな編成です。
 最初は伴奏ナシでImagineを1コーラス、続けてこのままを歌いました。考えてみるとこの規模の、ライブハウスで彼女の歌を聞くのは2回目、それも前回は彼女の声よりもバンドの方が主張していた感があったのですが、今回は違います。彼女の声がおよそライブハウスとは思えないほどにシンとした空間に拡がっていくのを感じられました。
 挨拶のあとはclass of 1996、ちょっとしたMCをはさんで虹を歌います。これまでと特に内容に変化はないけれど、逆に伝えたいことをハッキリ決めているようなMC、次の曲はREASONでした。そして、告知のあと、最後の曲Voices9.11のテロに際して書かれた曲であることはこれまでも本人が語っていたのですが、最近、日本でも同じなんじゃないかと思うということを話しはじめました。そして、子供たちが不幸にならないように祈りたい。そう言って歌い始めました。
 すべて終わって、宮原永海はステージを去りました。今回の演奏はこれまでの中でもっともクオリティの高い、とてもすばらしいものでした。初見のMさんも「すごかった」と感想を聞かせてくれました。
 2組目の準備の間は客電も上がり、ちょっとした休憩タイムです。このあと演奏するAmikaをMさんは1度見たことがあって、その時はギター1本の編成で、「独特だった」という感想を持ったようです。しかし、今回はフルバンドな構成なので、どんなものなのか、皆目見当がつきません。
 演奏曲数は5曲。印象としてはちあきなおみとか、花*花が重なるような曲もありましたが、フルバンドですから、ガンガンに響く曲もありました。
 しかし、何と言ってもMCが秀逸(?)でした。なんというか挙動不信なカンジで、曰く、「歌っている時はYes!というカンジなのですが、それ以外のときはどうしていいのか、というカンジで、こんな支離滅裂な人だと思われたらどうしようと思ってます」とか「今日は晴れてよかった。私はミュールが濡れるだけでイヤな気分になってしまうので…。あぁ、私のことではなくて、みなさんもそんな風にならなくて良かったなぁと」とか「最初、このライブのお話をいただいた時、女性のアーティストが4組出て、しっとりとした雰囲気での演奏を楽しむ企画だと言われたのですが、蓋を開けてみれば、こんな“ロックロックこんにちは”なカンジで、リハの時もイベント企画の方に申し訳なくて顔を合わせられませんでした」など、ちょっと天然系ですが、おもしろかったです。
 終了後の感想は思ったよりずっと普通のバンドで、これまたよく通るいい声をしていたので、聞き惚れてしまうところもありましたし、声量も十分なので、バンド編成の曲は素直に楽しめました。
 Mさんも「よかった」と感想を漏らし、前に聞いたときは暗くて、この人は過去に何かすごくイヤなことがあったんだろうかと思ったんだそうです。確かに、ギター1本で聞かされたら滅入ってしまいそうな曲もありましたから、しょうがないのかもしれません。いずれにせよ、ここまで2組、ともに当たりです。「いいよね」なんて話していたのですが、Mさんがポツリともらした「みんなこんなにステキなのに、何でメジャーじゃダメなんだろ」という一言がひどく切なかったです。
 さて、これで折り返し。3組目はKANONでした。英語詞の歌を多く歌っていたということぐらいしか分かりませんが、この方も声量・表現力ともに申し分ありません。チャペルコンサートの予定もあるそうなのですが、それはとても似つかわしいものに思えました。
 この幕間の休憩時間にMさんから以前に渡したことのあるMDについて確認されました。ここで初めて私が誰か(というか、何をした人か)がようやく分かったようです。普段の私がいかに印象の薄い人物かが窺われますね(苦笑)。そのMDの内容について、「すごくよかった」とか「よく聞いてます」と言われると、正直悪い気はしません。音楽の趣味が合うというのは、なんだかとても嬉しいことです。
 そしていよいよ、本日のライブの締め括りとなる加藤いづみの登場です。彼女の歌を良く聞いていたのは10年近く前のことです。まだ学生だった時分にラジオを聞き、CDを購入していたアーティストの1人です。それをこんなきっかけで、生歌を聴く機会に恵まれるとは思いませんでした。
 ステージ上の加藤いづみの印象は昔抱いた、それとまったく変わっていないようでした。最初に歌った曲、曲名こそ思い出せないものの、いい雰囲気の曲でした。何よりも、年経た加藤いづみは表現力の幅を、明かに広げていました。
 挨拶のあと、ギタリストの紹介。2人のギタリストが着いていて、1人は高橋研。加藤いづみのプロデューサーなのですが、10年も前からいっしょにやっているのを知っているので、それだけで、何やら嬉しい気持ちになります。
 「次の曲は、この中にもしかしたら知ってる人がいるかもしれない」と言って歌った曲は好きになってよかったでした。懐かしさと、素直に良いと感じられる今の自分の気持ちがない交ぜになって、ちょっとウルウルと来てしまいそうになりました。次の曲はこれまた懐かしい、ドライブでした。緩やかながらもリズミカルな、ちょっと好きだった歌なので、これも嬉しかったです。
 MCでは近況というか、今携わっているレコーディングに触れ、9月くらいにはアルバムのリリースができそうな話しをしていて、そんな話をすると新しい曲を披露したくなるとネガ(仮)という歌を歌いました。そして、最後の曲です。と前置きして、「これも新しい歌」と歌い出した曲はきみのことという歌でした。ミディアムテンポなちょっと切なくなるような歌で、初めて耳にするのに、昔から知っている“加藤いづみ”らしさに溢れていて、聞いていてとても心地のよくなる1曲でした。
 歌い終わると、拍手に送られて加藤いづみはステージを去りました。客電も上がりましたし、終了かなと思い、隣のMさんを見ると、感無量というか余韻に浸っていて、とても言葉を掛けてもいい雰囲気ではありません。その間も他の観客からアンコールを求める拍手が鳴っていました。アンコールはないだろうと思っていたのですが、ふたたび客電が落とされ、加藤いづみが再登場しました。
 「このアンコールの拍手はイベント全体が終わって欲しくないというものなのか、最後に歌った私に対するものなのか、迷ってしまったんですけど、最後を歌わせてもらったので、責任を持ってアンコールを務めさせてもらいます」と歌った歌は新世界でした。
 ふたたび大きな拍手に送られてステージを後にする加藤いづみを見送って、今度こそ本当に終了、周りはいそいそと立ちあがり始めます。
 アンコールの間に落ち着いたのか、Mさんが「ライブでしか歌わない曲って、きみのこと、なんですよ」とちょっと興奮気味に教えてくれました。それぞれの感想を交わして、今度のCDには入りそうですねと、Mさんは実に嬉しそうでした。「じゃぁ、また。いずれどこかで」と挨拶を交わしてMさんと別れました。願わくば、次に会うときは歌を聞かせてもらいたいな、と心の底から思いつつ、1日の余韻に浸りながら家路につきました。