正平調というコラムから。。。
 昨日行われた主権移譲のことに触れて書かれていましたので。。。

 中東にはたくさんの戒めが伝わる。曽野綾子さんの「アラブの格言」(新潮新書)を読むと、混迷するイラク情勢の一端が格言と重なって見える。

 その一つに「一夜の無政府主義より、数百年にわたる圧制の方がましだ」がある。圧制の方がいいなんておかしいと日本人なら思うが、各地の部族長の統率で厳しい自然環境を生き抜いてきたアラブならではの知恵が、こう言わせる。

 イラクでの主権移譲式典が前触れなく行われた。晴れやかであるべき式典をひそやかにせざるをえない異常さ。出席者がイラク暫定政府のアラウィ首相らわずか6人という光景は、実に寒々しい。爆弾テロや要人暗殺などが相次ぐイラクは、それほどまでに危なっかしいということだろう。

 フセインの圧制から解放したと、米国は胸を張る。しかしフセイン政権が倒れても、血で血を洗う現状を「無政府」だと国民は思っているのではないか。そこに無理矢理、米国流民主主義をはめ込もうとしても、アラブの歴史が反発するだけではないか。混乱はさらに増幅しないか、懸念が消えない。

 格言の中には「幸福は一場の夢、悲しみは一年続く」というのもある。米軍の爆撃などで家族を失った人たちが銃を手にしているともいう。積み重なる国民の悲しみを、統治を託された新生イラクは癒やすことができるだろうか。

 連合国暫定当局の行政官は、移譲の手続きを終えると、ヘリでバグダッドを離れてすぐに帰国した。地上に恐怖と混乱、悲しみを残して去る姿が、戦場の国の痛ましさを物語る。。。

 戦場の国。。。爆撃の音が止むのはいつになるのだろう。。。