実は昨日付けの地元紙の社説に。。。
 イラク戦争一年 ということで、なぜ「脅威と混乱」が増したのか と題して、

 夜の明け初めとともに始まったイラク戦争の開戦から一年がたった。

 大量破壊兵器を有するイラク独裁政権は差し迫った脅威であり、それを解体して、危険な武器がテロ組織に流出することを防ぎ、そのテロの世界拡散を封じ込める。イラクの開放は中東の民主化、安定につながる。米ブッシュ政権はそう宣言して、国際世論や国連を振り切って英国とともに攻撃に踏み切った。

 確かに、独裁政権は姿を消した。しかし、テロは止むどころか、もttもおそれた拡散の様相を見せ始めている。イラクは混乱の度を増し、復興は遅々として進まない。開戦をめぐって大きな亀裂を生じた国際協調体制も修復できないでいる。

 テロ根絶は当然としても、道筋を誤ったのではないか。戦争を主導した米英両国に、こう問いかけなければならない。それは、いち早く戦争を支持し、自衛隊を派遣した、わたしたちの国への問いでもある。

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 「一夜の無政府主義より数百年の圧制の方がましだ」

 こんなアラブの格言があるという。作家の曽野綾子さんが近著で紹介している。治安の悪化と、暮らしの厳しさを訴えるイラク国民の声に重なるではないか。「米国は何もしてくれない。サダムの時代の方が、まだ安全だったし食べられた」

 米国は二つの誤りをおかしたというべきだろう。ひとつは戦争そのものの正当性であり、もうひとつは周到な準備をしないままの占領統治である。

 力の行動から転機を

開戦の最大の理由とした大量破壊兵器はみつからない。いや、無かった可能性が強まっている。米調査団長だったデビット・ケイ氏が「存在するとは思えない」と議会で証言するに及んで、慌てて検証委員会を設置した。英国も同様である。

 ブッシュ大統領は、大量破壊兵器には口をつぐみ、イラク開放の成果のみを強調するようになった。ブレア首相も多くを語らなくなった。

 しかし、疑問符の付いた正当性を、「過ぎたこと」として封印するわけにはいかない。「不完全ながら世界の平和と安定のよりどころだった原則」(アナン国連事務総長)を破ってまで強行した先制攻撃が理由も根拠もないものになるからだ。

 しかも、その情報が誇張されたり、ゆがめられていたりしたとすれば、これほど危ういことはない。「テロとの戦い」は、国際社会が結束してこそ成り立つものである。結束の要は、お互いの信頼だ。ブッシュ政権は、それを急速に失いつつあることに気付くべきだろう。

 ブッシュ政権の最大の誤算は、米国流の民主化は歓迎され、フセイン政権さえ倒せば占領統治は容易と考えたフシがあることだ。押しつけの民主化は根付かず、社会の混乱と大量の失業を生んだ。超大国のおごりというほかない。

 イラク戦争は、テロを封じ込めるどころか、かえって危険を招き寄せ、拡散させつつある。イラク国内で続発するテロは国際組織によるものとの見方が有力だが、イラク国民の治安や暮らしへの不満を隠れみのにしていることを見逃すべきではない。

 スペインの列車爆発テロも、こうした組織に属する者か、共鳴者の犯行だとすれば世界は容易ならざる事態に直面していることになる。日本も例外ではない。

 スペインでは、対米協力を続けてきた与党がテロ直後の総選挙で敗れた。惨劇が大きな要因になったことは間違いない。次期政権は、イラク復興が国連主導に切り替わらない限り撤兵する方針を表明している。有志連合国の一角さえ崩れ始めた。

 もうこれ以上、イラクを混乱の地にしてはならない。復興を軌道に乗せ、テロを封じるためには、ここまでの力ずくだけの行動を転換するしかないだろう。

 開戦をめぐって対立した仏、独も巻き込み、国連を中心に政権移譲を確実にしていく。世界が一致して、安定した国づくりに手を貸す態勢を構築すること、まず全力を挙げる必要がある。

 日本の役割を見直せ

 この一年、イラク戦争は日本にとっても最大のテーマだった。しかし、自衛隊のイラクでの活動が本格化するとともに、既に議論はおわったかのような空気が漂ってはいないだろうか。

 小泉首相の戦争支持は、対米協力が際立っただけで、この難問に日本として主体的に取り組む姿勢が見えなかった。憲法の枠を超え、無理やり「非戦闘地域」をつくり出して自衛隊を送ったが、復興支援への確かなプログラムも伝わらない。現地で苦労する自衛隊員はやり切れないだろう。

 米国に歩調を合わせる。それが日本の安全であり、国益にもかなう。わかりやすいが、世界はそれほど単純明快な論理で動いてはいない。イラクの現状は、その証明である。

 「同盟国」だからこそ、米国を説得し、国際社会の輪の中に引き戻す。米英と溝を深めてきた仏、独にも働きかける。国連を中心とした復興プログラムづくりの中心にもなる。イラクの人々の日本への高い期待にこたえる道は、「同盟国」に力を示して見せることではない。。。

 ↑は、3月21日付の地元紙の社説をそのまま引用しました。。。