島田雅彦著『オペラ偏愛主義』
島田雅彦著『オペラ偏愛主義』。音楽文化の総合芸術とおもうが、オペラ。

 演奏、演技にはじまり広報、設営、演出など、大人数を擁する。演奏のたびに、入場料収入でペイするのか、団員の報酬とはどうなっているのか?、気にかかるところ。

 気にかかるところといえば、日本では到底、公的支援がなければ独立採算は無理の文化事情と考えるが、その事情は世の東西を問わないらしい。

 権力者の庇護と言うより、家臣に対する権威の誇示が停滞ときから、市民による広く、浅くの経営論理は維持しがたくなっているよう、だ。

 第一話はモーツアルト作曲「ドン・ファン」ならぬ「ドン・ジョヴァンニ」。ヒーローは実に2065人の女性と関係するという。この間、じーっと付きそう家臣もいると、いう。

 西のドン・ジョヴァンニか、東の光源氏か。作者は提起している。気の遠くなる貴族社会。さて、演じられる目的はなにか。たとえば、能であるならば。

 能であるならば、自らの活躍を忘れてほしくない、死してその活躍を長く顕彰する、ぞ」。そのメッセージが能の物語をつくり、演じさせ、作者や演技者のパトロンを務める役まわりとしている、日本ではそう申すのであるが。