福井勝義著『東アフリカ・色と模様の世界』
 福井勝義著『東アフリカ・色と模様の世界』。サブタイトルがあって、「無文字社会の豊かな創造力」。このタイトルに魅かれて読んだ。

 創造力の豊かさ、その所以はなにか。末尾に近く、次の記載がある。
 「自然のリズムをたくみに文化にとりいれ、自然のさまざまな要素と色・模様を介してつながっていた」(169p)。
 「自信あふれた誇りの高さ」「自然と人間との深いつながりから生まれてきた彼ら自体の存在感から醸しだされるもの」(同)。
 「自然はそれほど私たちの既存の想像力を超えた存在」「自然との関係で育まれた人類の豊かな想像こそ、私たちにかぎりない創造力をもたらしてくれるはず」(171p)。

 舞台は東アフリカのボディ。生活の中心に牛があって、その色と模様が命名原理が多様な毛色の認識を基盤にしている社会を示す。

 「牛の毛色多型現象」は、「家畜化された動物のもっとも大きな特徴」なのだそうで(70p)、農作業の過程で関与する牛の色・模様が決まっている(147-160p)。

 その「毛色多型現象」。永年の民俗遺伝観を基盤にしていおり、民族の色・模様の認識・分類体系は、「毛色にもとづいた雌牛の認識・分類体系とまったくといっていいほど対応するという」(90p)。

 ローレンツ著『文明化した人間の八つの大罪」が引用されている。「伝統の破壊」の項目に、「合理的に理解できることだけが、あるいは科学的に証明できることだけが、人類の確実な知的財産であるという迷信は、有害である」(170p)。

 本書は2000年1月の出版。手元に置いて暫くながら、震災後の原発事故。読んでみて感慨深いものがあった。