生かせるものは、活かそう=前田正名<平海岸に人工を施せる港>の急務240427
薩摩出身で維新政府の若き官僚として知られる前田正名。
その論述中に、本邦の港湾施設に言及した記載が『前田正名自叙伝』のなかにある。
フランス留学の折り、フランス国マルセイユ港に入港した直後のことだ。

 一つの文脈を二つのセンテンスにわけて、添付画像で示すことから始めたい。
 記述は長男によって記録されたもので、『社会と国家』という雑誌に掲載された一文だ。
 本邦では地形にそった天然港湾に頼るのみで、「国家の利害に非常の影響」「帝国の設備なく国家の耻辱、国家の損失」と、慨嘆する。

 初めに黄地の画像に示した「乗客に対して、最も危険を感ぜしむるものは港」と喝破する。
 そのうえでわが国では、国内航路にのみ視点をすえて船舶の大型化&動力化、すなわち汽船化に対応していない点を、強く嘆いている。
 近代国家として、国際社会に伍しては行けない。危機感を表明した点である。

 続けて正名は、海外の港湾が日本のように天然の地形=「天然の形成によりて港を造り居る」のではない。
 然らばいずれ。「平海岸に人工を施せる」港。つまり修築港湾の造成が、急務たることを述べていた。
 前田の提言があろうとなかろうと、防波堤、接岸岸壁に灯台を具備した三点セット。建設港湾は、早晩、日の目をみたことであろう。

 そうであっても、阿寒摩周国立公園の表玄関を標榜する釧路港しては、以下の点に着目する。
 それは<遅れがちな建設港湾造成や、航路標識の一形態としての灯台設置に寄与した>、と。
 天成港湾の時代に、厚岸港・根室港に後れをとった釧路港。人口の防波堤を築き、接岸岸壁を配して、航路標識の施設も備えるの契機としておきたいのだ。

 生かせるものは、活かそう=前田正名<平海岸に人工を施せる港>の急務240427