友と女と。ふたつの笑顔。
自分で考えているより疲れていたのか、8時過ぎにアップしたにもかかわらず、蒲田に戻った時には、やる気がゼロに。シャワーを浴びても風呂にゆっくりとつかってみても回復せず。眠いのに眠れず、つまらない小説を読みながら明け方まで。ベッドに入ってからも3時間ほどは寝たりおきたりが続いた。で、気づいたら4時近かった。熟睡したのか、ゆうべの疲弊感と厭世気分は溶けていた。熱いコーヒーを淹れ、時間をかけて朝刊を読んだ。いくつかの夢のなごりがフラッシュ。いずれも撮影中の断片。

ロケ現場で、渡辺とカメラポジションを検討しているところに、賢明さんがふらっと現れた。夢の中でも現実と同じ経過らしく、ずいぶんひさしぶりに会ったようだった。彼は、どてらを羽織っていた。帯はせずに、どてらをマントのように羽織っていた。笑顔。別れた頃とどこも変わらない、あの高校の頃と同じ賢明smileを浮かべていた。昨日会った人と、さりげなく別れるように挨拶をした記憶だけが残っていた。もうひとつ。やはり撮影の現場。艶夢だった。年に数回、ここ何年かにわたって見続けている艶のある夢。いつもギリギリの所で止まっているのが口惜しくも可笑しくもある、ディテールがひどくリアルで焦りを誘われる、あの【艶夢シリーズ?】。腰に手を回し、引き寄せたところで終わっている儚い断片。振り返ったその表情の満面の媚びがまぶしくて、柄にもなく照れてしまった瞬間で途切れた記憶。

2つの笑み。
夢の中のarchaïquesmile。

仕事に向かう気力が消滅した夜に見た、どこか桃源郷のような、微笑みふたつ。コーヒーを3杯飲み終わった頃には、萎えた気力がすっかり、戻っていた。と、思えた。