十六夜。立待月の月光力と開花待ちの青い花のこと。
タバコを買いに出て遭遇。東京でこんなに強い月の光に会えるのは年に数回。盆や正月の頃。春の宵にもかかわらずすっきりとまぶしいくらいに冴え冴えと輝いていて、しばしみとれた。昼は辻をしのび、夜は月に見入る。つまらねえ年のくだらねえ時間の中にも、見惚れるような一瞬がある。のだ。何もなかったけど、変えがたい一日だった気がする。撮影部のミニビオトープではメダカが泳ぎ夏になると水草が青い花を咲かせるのだと月見仲間のナガオカからさっき。夏になって青いその花が開いたら、行ってみようか。

上弦から十六夜まで。一寒一温で移ろったこの晩春、よく月を眺めた。蒲田松竹撮影所跡の公園で。辻の三周忌、としておこう。