マッチ擦るつかの間海に霧ふかし
なにがあったのか判然としないが、電話の向こうでむせび泣いていた。大の男が声上げて泣くのを今週は珍しいことに二度聴いたことになる。いちどは嬉しくて泣いている男。二度目は口惜しさに声ふるわせて慟哭する男。マッチ擦るつかの間海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや。寺山の短歌が慟哭の向こうに浮かぶ。これから逢うか、と聞くと、ダイジョウブだから、とまた泣いていた。感情の起伏の激しい男には、感情の迸っていくような仕事の機会を与えてやれたらと思う。来週、逢うことにし電話を切った。ひさしぶりにE.Morriconeを聴く。