ウール→コットン。紙香水
休んでいた。
司馬遼の“坂の上の雲”の文庫判を日曜の夜から読みはじめ、断続的に読み続けている。不思議なことにストーリーのほとんどを忘れている。単行本と文庫本の字組の違いがあるとはいえ、なんだかおかしい。30年以上前の作にも関わらず、あきれるほど文体が古びていない。ふしぎな作家ではある。面白いのかつまらないのか判然としないうちに物語だけがぐんぐん進んでいく。まだ文庫判三巻に入ったばかり。あと6冊あり。ロケ用にとっておいてもいい。
週末、ウールを着たままで過ごしていたが、まちなかはすっかりコーットンシーズンになっていて気が引けた。夜になるとまだ肌寒い気もするが、ウールからコットンにチェンジ。秋から引きずっていた気分を脱ぐ。オフの間に、長岡に教えてもらった紙香水を200枚ほど灰にした。夜中に小説を読んでいて吸っていたタバコの匂いが気になった時の効果はかなりのものだった。屏風折りタイプもいいが、渦巻きタイプの愛嬌が秀逸。ひきはがし渦をカタチにしているだけで気分が溶ける。匂いの度合いも、ありがちな甘さが抑制されていてなかなか。紙片タイプは、ネットに書いてあった“しおり”にも使っている。司馬遼の“坂の上の雲”を開くと、香る。生まれたばかりの“明治”という若い国の盛衰物語に、フランスの紙香水のひなびた香りはよくなじんでいる。