春の夜はさびしききわみ…
スタッフを残して帰宅。やれることはすべてやった。後は、明日音を整えて三日を待つだけだ。ま、待つとは言っても、ただ無事に進行することを祈るだけだが…。秋から春まで。4カ月半。心昂ぶらせるものの何一つ見つけられないままに、撮影も編集も、いずれも申し分のない出来となっていったのはなぜなのか。その理由が見当たらないままにフィナーレとなりそうだ。むりやり根拠を見いだそうとすれば、3年近くにわたって全力を挙げて取り組んだ古河案件。あるいはすべての仕事を3カ月放棄して無収入のまま取り組んだJapanesque-étude100title。それらとは何の関係もない、ただの“成熟”?ひさしぶりにあかりやコレクションのベサメムーチョ集をiPodで聴きながらウエブで取り寄せたハワイコナを淹れた。スタジオの気の抜けて煮詰まったコーヒーを15杯も飲んだせいか、濃く熱いコナが砂漠の水のように咽喉にしみていく。むなしくうれしくもかなしくもはらだたしくもせつなくもなし。上野の緋桜は今夜、文字通り吹雪のように散っていたと聞いた。前が見えないほどだった、と、声の凍ったそのひとに吐き捨てるように教えられた。階段を上がった目の前で、バーの小ぶりの染井吉野が夜目にも白く咲いていた。地下生活、延べ20日間。口惜しくも、ない。が…。