タガが外れた
とはじっさいのところどんな塩梅のことなのか
前から気になっていたが、今日の午後、突然納得した。
根拠もなにもなく、いま現在のわが状態こそが、それなのだ。と。
新宿も古河も、あらためて考えたらはるか彼方の異国どころか
歴史的な隔たりすら感じさせる考古学的世界の出来事に感じられてならない。

Aのグチを聴きながら2ケ月前なら、
もうすこし親身になれたものをと他人事のように思った。
わずかな日数で、こんなに不満をためていたら
十年応じてきたD2TのSは我慢強さの極北にいる
男の中の男になっちゃうじゃん、とおかしくもあった。
ふたことめにはクライアントののおごりでいきましょうよ、
と笑いかけられながら
録音部すらまともに手配することもできずに、
なにがおごってもらおうだ、とうんざりを通り越した。

断って撮影部と六本木に戻り飯を食べた。
メンチカツライスとオニオンスープ、一杯の赤ワインが
しみじみと腹にしみ渡っていった。
グチもなく笑いだけが満ちて、なんとも胸のすく時間となった。
彼らと別れた直後にかかってきた、
セクハラ野郎の弁解電話を駐車場で耳にするまでは。
きっかり一時間半、駐車場の近くにクルマを停め
ねちねちと弁解を続けるセクハラ野郎の話を聴かされ続けた。

セコイかセクハラか
なんとも阿呆らしくなってきて
帰りの車中で渡辺相手にあたりちらして解消。
渡辺には悪いことをした。

ああいう男はなぜ露呈すると
悪意もその気も無かった。ほんの出来心だった
などと女々しい言い草に頼るのか。
女々しいと書いたが
おれの周りを見渡しても
めめしいのは女ではなく男ばかり。
男男しいと書くべきだろうか。
通じねえだろうがな。

たのむから「確信犯」になってね。
踏まえた上で踏み込んでね。
露呈したら、甘んじてね。
承知の上でやりましょうね。

悪いことも逸脱することも道を外れることも
すべてが承知の上の振る舞いならば
しょうがねえなあ、とため息つきながら、つぶしにかかる気にもなる。

それをなんだよ。
そんなつもりは、いやがっているようにみえなかったから、つい…
てめえの女房連れて来いよ今から
と言えば、勘弁して下さい、だ。
途中で怒る気にもなれなくなった。

若い頃に学生運動でなんどか留置場に入れられた。
犯罪者の集うというか集わされた?留置場では
性犯罪者がもっとも軽蔑されていて
ことあるごとに泥棒や強盗やヤクザものたちから苛められていた。
目くそ鼻くその類いではあるが、
悪の世界にも上下があって
嫌がる相手をむりやりやる、というのは
犯罪の中でも最下等に扱われていることを知り
17歳のニキビ面の少年は深く得心したのだよ。
ドライバー一本で年収二千万(当時で!)を豪語し
看守の見ている前で連日壁伝いに這い登る練習を欠かさなかった
ドライバーのトメさんと呼ばれた名物泥棒が
つい手を出してしまったと弁明を繰り返す男に
「おめえの大切な人にやってもらいたくねえことを
他人様にいたさねえ、それを守ればいいんだよ」
と強姦犯に説教していたことを思い出す。
盗人にも三分の理を目の当たりにし
17歳の革命小僧は、座右の銘とすることにしたのに。
一昨日の現場で耳にした瞬間に掃除しなかったことが
くやまれてならない。
朝の段取りの悪さに爆発したせいで
先を急いでさえいなかったらと
口惜しいかぎりである。

贈賄にセクハラ
シャバはほんとーになんでもありで恐れ入る。