荒ぶる血★★★★★
J・C・ブレイク著/文春文庫 加賀山卓朗訳2006年4月10日刊

“無頼の掟”も傑作だったが、この原題UNDER THE SKIN.はさらにクール。原題を見てなるほどと思いながら、めずらしいことに邦題も大納得。いちばんできのいいメルヴィルの映画をさらにドライにして掘り下げたような文体。読み終わってチャンドラーの“長いお別れ”を脈絡なしに思い浮かべた。2003年にアメリカで刊行された21世紀ノワールとして、語り継がれることになるのだろうな。解説を書いた関口苑生は「途方もないクライマックス」と結んだが、結末はむしろ凡庸に思った。プロセスの味わいの品のよさがなんともいえない。たぶんそこが“長いお別れ”と重なったのか。いい時間を、すごせた。極上の一冊。